現代造佛所私記 No.48「朝のルーティン」
「朝だよー」 まだ薄暗い部屋で、娘を起こす私の声かけに、もぞもぞと眠たそうにうごめく小さな体。目を閉じたまま、ゆっくりと私に身を寄せてくる。 「大好きたっち」それは、娘が赤ちゃんのころから我が家にある、朝一番のハグ——か...

「朝だよー」 まだ薄暗い部屋で、娘を起こす私の声かけに、もぞもぞと眠たそうにうごめく小さな体。目を閉じたまま、ゆっくりと私に身を寄せてくる。 「大好きたっち」それは、娘が赤ちゃんのころから我が家にある、朝一番のハグ——か...
朝食の準備ができてから、氏神様のもとへ。 今日は月詣りの日だ。結婚してから、よほどのことがない限り夫婦で参拝している。 今年も、桜の季節が通りすぎようとしている。鳥居の脇には葉桜が爽やかに揺れていた。 人が集うのは年に二...
日曜日の朝はゆっくりだ。体内時計優先で、光や匂い、味に素直に心開く日でもある。 夫は休みの日も、起床時間は少しゆっくり目であること以外は、作業場のルーティンを守る。 仏像に触れない日はない彼の人生を、今日も讃えたい。讃え...
娘を連れて一度、遊園地に行ったことがある。4年前の春のことだ。 5歳の誕生日のお祝いだった。 遊園地のゲートで、雲一つない青空と、やや強い風に乗ってやってくる甘いお菓子と花の香りに胸が高鳴った。 私は、はしゃぐ娘のスカー...
今日は花まつり。お釈迦さまの誕生日だ。 夫と娘は近くの寺の花まつりに出かけたが、私は外せない仕事があり、気づけば夕刻を迎えていた。お下がりの甘茶をいただきながら、一息入れる。 例年、我が家では筍=仏影蔬(ぶつえいそ)を誕...
日華が旅立って2ヶ月が過ぎた頃、テンとロイロがいつの間にか家を離れた。 テンは山道で再会し、一度は家に帰ってきた。だが、再び隙をついて脱走しそれっきりだ。ロイロはもう2年姿を見せていない。 それでも、テンはまだ山のどこか...
嘘だ、と思った。 突然の別れを、受け入れるのはむずかしい。体に触れれば、まだ温もりが残っている気がして、目を閉じれば、いつもの声が聞こえてくる気がした。 段ボールに毛布を敷き、そっと体を寝かせる。どうしても出かけねばなら...
日華の子猫たちが生まれてから、健康管理のため体重を毎日測った。 素晴らしい健康優良児っぷりで、早々に測定をやめることになるが。 里親を探していたので、子猫たちは便宜的に「クロイチ(黒1)」、「シロクロ(白黒)」、「クロニ...
黒猫マダム・日華の臨月が判明した3日後、午前3時。 彼女は静かに産気づいた。 「ニー!ニー!」という、かすかな鳴き声が、夜の沈黙を破った。 日華はゴロゴロと喉を鳴らしながら、生まれた赤ちゃんをせっせと舐め、第2子、第3子...
8月の終わりに奇跡が起きた。 その日は、予定外の用事で帰宅が日暮になった。 「ずいぶん日が短くなってきたね」などと話しながら、星が瞬き始めた山の麓に差し掛かった時だった。 白い影がさっと車の前を横切った。 「あれ、今のっ...