日華の子猫たちが生まれてから、健康管理のため体重を毎日測った。
素晴らしい健康優良児っぷりで、早々に測定をやめることになるが。
里親を探していたので、子猫たちは便宜的に「クロイチ(黒1)」、「シロクロ(白黒)」、「クロニ(黒2)」と呼んでいた。結局は縁がなく、5匹と暮らしていこうと決めた。
第3回猫の名前審議委員会が立ち上がる。
審議の結果、クロイチは呂色漆のような色だったので「ロイロ」、白黒は日華や皓月にちなんで「テン(天)」、クロニは他の兄弟に比べて小柄な黒猫で毛がツンツンして見えたので「ウニ」。初代や二代目の猫たちと比べ、名付けも抜け感が出てきた。
子猫が健やかに成長していく姿を間近で見られるとは、なんと幸福なのだろう。
子猫なりに「ふー!」と威嚇したり、皓月の尻尾に飛びついたり。押し入れで3匹が団子になって眠り、そこへ皓月や日華も加わり、5匹で「巨大な猫」を作ったりした。
3匹とも性別が分かったころ、性格もはっきりしてきた。
ロイロは雄で一番体が大きいが、母猫にくっついて過ごす甘えん坊。テンも雄で、皓月と仲が良く向こう見ずな性格。ウニは、おっとりしていて独立心があり、一人遊びが上手。
「ロイ君、テンちゃん、ウニちゃん」
近所の子どもたちや、来客に遊んでもらったりして、それぞれに可愛がられていた。






そんなふうに賑やかに毎日が過ぎてく、冬を目前にしたある朝だった。その瞬間は何の前触れもなくやってきた。
早朝から出かける予定があった私たちは、いつも通りに朝の支度をしていた。冬の始まりを感じるピンとした空気と、朝もやが美しい1日の始まりだった。
「さぁ、急がないと間に合わないね」と他愛ない会話を交わしながら、私は助手席のドアに手をかけた。
そのとき——。
視界の端に、黒い塊が見えた。
「……え?」
胃の腑がざわめき、胸が早鐘を打ち始める。
体が動かない。時間が止まったようだった。
まさか。そんなはずはない。
目を凝らして、ゆっくり、ゆっくり近づいていく。
お腹がぽっちゃりしたいつもの黒い輪郭——が、朝露を受けて静かに光っていた。我が目を疑った。
「日華ちゃん…日華ちゃん?」
恐る恐る声をかけた。
いつもなら、呼ばれると気だるそうに目を開け、こちらをチラと見る日華。 しかしこの朝は、固く固く目を閉じたまま、すでに硬直した体を横たえていた。
日華はもう、二度と動くことがなかった。
その朝を境に、子猫たちの様子にも、少しずつ変化が現れはじめた。