カテゴリー: 家族の肖像
現代造佛所私記No.71「母の日」
今日は母の日だった。実家の母に感謝のメッセージを送り、我が家は朝から大掃除。 永遠に整うことのないおもちゃや工作材料の片付け、廊下の拭き上げ、洗車、窓拭き。 水回りの掃除、不要なものの処分、猫のDIY痕(爪で引っ掻いて遊...
現代造佛所私記No.70「今日はうどん」
「今日のコラム、何にしようかな〜」 助手席でぽつりと呟いたら、夫がハンドルを切りながら笑った。 「なんか、今日の晩ごはん何にしようかな〜って言ってるみたいだね」 確かに、そんな感じだったかもしれない。「書くこと」がいつの...
現代造佛所私記No.69「根を張る祈り」
数日間、私と娘二人で、誰もいない実家に帰省した。 旅に出た両親の代わりに、老猫チャトラの世話を任されたのだ。食糧と仕事を持ち込み、娘と居間を占領した。 主のいない田舎の築130年。慣れ親しんだ実家とはいえ、広さをもてあま...
現代造佛所私記 No.67「マンカラ」
「今日は子どもの日なんだよね?Yちゃんの日なんだよね?」 という言葉が胸に刺さる。なんとかなだめながら仕事に目処をつけ、老猫の世話をし、実家を後にした今年のこどもの日。 この日だけではない。ゴールデンウィークは、実家以外...
現代造佛所私記 No.64「オペラ座の猫」
夜8時。海辺の町は、闇が深い。 出先で急に発生した仕事に目処がつき、娘を連れて食料の買い出しに車を走らせた。 夜空と凪いだ海は、まるで暗幕を墨に浸したようだ。浜辺沿いの国道を北へ10分ほど走ると、このあたり唯一のコンビニ...
現代造佛所私記 No.60「娘の顔」
「水を外に撒くときはね、“どなた様も、此方様も、どいてくだされや”と声をかけてから撒くんよ」 そう教えてくれたのは、母だった。母が祖母から、そして曽祖母から受け継いだ言葉だという。 もうひとつ、何度も聞かされた言葉がある...
現代造佛所私記 No.55「けずる」
梅の香りが時折かすめる山あいの小さな町。麓から見る山は、いただきに白い帽子をかぶりつつも、春を待ち侘びた生き物を解き放とうとしていた。 確かな春の兆しがあるというのに、この六畳の和室では、季節の気配も、時の流れも止まって...
現代造佛所私記 No.53「思い込み」
「うーん。どうしたものか」 昨夜、手帳をじっとみながら、考え込んだ。 翌日の午後の枠に、「参観日」と「打ち合わせ」の予定が、色違いで記入されている。 打ち合わせは前々から決定していて、参観日には行けない、ごめんね、と娘に...
現代造佛所私記 No.52「スパイスの香りと包丁の音」
今、これを書いている間に、吉田仏師(夫)が得意のビリヤニとスパイスカレーを作ってくれている。今日の夕飯は、完全に夫まかせだ。 私は土間にある仕事机でPCに向かっているのだが、そのすぐ後ろが台所なので、どうしても美味しそう...