現代造佛所私記No.69「根を張る祈り」
数日間、私と娘二人で、誰もいない実家に帰省した。 旅に出た両親の代わりに、老猫チャトラの世話を任されたのだ。食糧と仕事を持ち込み、娘と居間を占領した。 主のいない田舎の築130年。慣れ親しんだ実家とはいえ、広さをもてあま...

数日間、私と娘二人で、誰もいない実家に帰省した。 旅に出た両親の代わりに、老猫チャトラの世話を任されたのだ。食糧と仕事を持ち込み、娘と居間を占領した。 主のいない田舎の築130年。慣れ親しんだ実家とはいえ、広さをもてあま...
サラサラと流れる川の音にふと気づいたのは、土間で夢中でパソコンに向かっていたお昼前のことだった。 今朝方は少し肌寒かったので、火鉢をつけていた。気温が上がってきたのと、換気のために川側の戸を開けて風を入れていたのだ。 絶...
「今日は子どもの日なんだよね?Yちゃんの日なんだよね?」 という言葉が胸に刺さる。なんとかなだめながら仕事に目処をつけ、老猫の世話をし、実家を後にした今年のこどもの日。 この日だけではない。ゴールデンウィークは、実家以外...
私は、「承欣 SHOW-GON」という、神社仏閣や伝統文化に特化したPRサービスを提供している。 PR=Public Relationsといえば、メディア各社と渡り合う、花やかなイメージを持たれる人もいるだろう。けれど、...
2025年4月28日(月)〜5月4日(日) この一週間は、コラムの執筆だけでなく、あらゆる仕事の打鍵音が鳴りっぱなしだった。 10歳にも満たない娘が「働きすぎだよ、休んで」と、夜中に懇願しにくるほどに。 忙しさは時に、感...
夜8時。海辺の町は、闇が深い。 出先で急に発生した仕事に目処がつき、娘を連れて食料の買い出しに車を走らせた。 夜空と凪いだ海は、まるで暗幕を墨に浸したようだ。浜辺沿いの国道を北へ10分ほど走ると、このあたり唯一のコンビニ...
梅雨の木曜、京都の街は薄曇りだった。 湿った空気に、遠くの山々がけぶって見える。修理を終えた仏像たちとともに、私たちは2年ぶりにこの地へ戻ってきた。 車の中には、慎重に梱包された阿弥陀如来像。凹凸の多い道路を避けながらの...
「パチッ!」 小さな火玉が舞い、慌てて顔を背けた。一晩中四国を覆っていた嵐が去り、新緑がキラキラと輝く日だ。火を入れた炭が、今日はいつになく爆ぜている。嵐の影響だろうか。 日差しに力はあるが、家の中は肌寒さがうっすら残っ...
5月1日、朔日詣りの日。 私たちは月に2度、氏神様にお詣りしている。 9世帯の集落で、私たち以外に月詣りにくる姿はなさそうだ。 前回はまだいくつか花を残していた参道の桜も、すっかり葉に覆われている。 南天の細い茎が小さな...
「水を外に撒くときはね、“どなた様も、此方様も、どいてくだされや”と声をかけてから撒くんよ」 そう教えてくれたのは、母だった。母が祖母から、そして曽祖母から受け継いだ言葉だという。 もうひとつ、何度も聞かされた言葉がある...