現代造佛所私記 No.24「しおり」
「右手の10番へどうぞ」 決して広くはない駐車場で、ハンドサインと軽やかな声が迎える。要所に配備された警備員たちが、今日も見事な連携を見せていた。 私も子どもも心躍らせてやってきたのは、「図書館」。我が家にとって一番のア...

「右手の10番へどうぞ」 決して広くはない駐車場で、ハンドサインと軽やかな声が迎える。要所に配備された警備員たちが、今日も見事な連携を見せていた。 私も子どもも心躍らせてやってきたのは、「図書館」。我が家にとって一番のア...
海辺の町の昼下がり、師走とは思えない日差しが注いでいた。 実家玄関の三和土(たたき)一面にブルーシートを敷き詰め、バケツに水を張る。 「トン、トン、トン、トン」 木槌のやや鈍い音がドアを挟んだ前庭から聞こえる。稲藁をたた...
夫と子どもが床に就いてから、炊飯器を開ける。湿らせた両掌にパッと粗塩をまぶし、米をよそった。 「きゅっ、ちゃっ、きゅっ、ちゃっ」 手首にスナップを効かせて米を握りつつ、翌朝の段取りを反芻する。1日を終えた台所は音がよく響...
蕗のとうも旬が過ぎた三月下旬、雪雲が高知までやってきて山を白く染めた。 SNSで降雪の様子を投稿すると、NHKから「夕方の番組で取り上げたい」と連絡があった。 南国高知の3月の雪は、ニュースになるのだ。 草花には確かに春...
「始まった始まった!」 春分の日。家族そろって、居間で興奮している。 日中居間でくつろぐことはほとんどない我が家だが、今日は特別だ。 仕事の手を止めて、吉田仏師がテレビのリモコンを操作している。 「予選を開始します。入場...
スイスのミケランジェロ財団が提供する、世界の職人名鑑「Homo Faber」がきっかけで、海外からインターンシップの打診があった。 なぜ高知の山奥の小さな工房に……? 当初、吉田仏師は「うちに来るより他の工房の方が良いだ...
今年に入り、海外からのインターンシップやapprenticeship(見習い、職業訓練)の問い合わせが続いている。 国内でも、これまで何度か打診があったがほとんど実現しなかった。地理的な面で先方に負担が大きいこと、何より...
「えぇっ?まだ持ってるの?」家族の驚きの声に、私の方が目を見開く。 (あぁ…もうそんなに月日が流れたんだ…) 手に収まるサイズの木彫のキリン(動物)の話だ。中学2年生の修学旅行で、自分用に求めた。 少し欠けたところはある...
私たちが住まう山の盆地には、今でこそ9世帯しかいないが、以前は200〜300もの人が生活をしていたという。 50年ほど前まで小学校があり、商店があり、産業もあり、周囲にもいくつか集落があり交流も盛んだったと聞く。田畑の痕...
我が家の軒下に、半鐘(はんしょう)が吊られている。 お寺にある鐘の小型版で、うちにあるものは新生児くらいのごく小さなものだ。 「時代劇で江戸に火事が起こった時の音」というと、イメージしやすいかもしれない。 8年前、あると...