現代造佛所私記 No.24「しおり」

「右手の10番へどうぞ」

決して広くはない駐車場で、ハンドサインと軽やかな声が迎える。要所に配備された警備員たちが、今日も見事な連携を見せていた。

私も子どもも心躍らせてやってきたのは、「図書館」。我が家にとって一番のアミューズメントスポットだ。

優雅な所作の警備員たちが、人懐っこい笑顔で迎えてくれるものだから、もうそこから非日常が始まっている。

丈夫で大きなトートバッグを懐に、娘と夫は子どもコーナーへ。私は一般開架スペースへ。

まずは検索機の前に陣取る。目当ての本を筆頭に、気になっているタイトルや著者名を打ち込む。「ありますように!」。どことなく祈るような急くような心地で、キーボードをカタカタと鳴らす。シュルシュルと検索結果のレシートが吐き出され、あっという間に5枚、10枚と折り重なっていく。

娘もずいぶん慣れたもので、気に入りの児童書シリーズの場所は把握しているし、検索機の利用方法も父親より詳しい。ブックカートを縦横無尽に滑らせながら、絵本や児童書を積み重ねていく。

前回、幼稚園の頃に気に入っていた絵本のタイトルが思い出せず、娘はカウンターで相談した。

どんなお話でしたか?と聞かれて、「男の子が穴から落ちて、不思議な世界へ行って、帰ってくるお話です!」と答える娘。

それだけで分かるだろうか…と体を硬くする私をよそに、職員さんは「”めっきらもっきらどおんどん”ですか?」とあっさり。「えっ!?すごい!!何でわかるの!?」と娘の目がパッと輝いた。

夏休みの自由研究でもお世話になり、こんな本まであるのか、こんなことまで書いてあるのかと驚いた彼女は、「図書館で調べられないことはない」と認識しているようだ。

図書館からの帰路は途中で喫茶店で休憩し、それぞれが本を開いて世界に浸るのもお楽しみ。

寝る前の読書も、欠かせない日課の一つとなっている。

ある日、娘が手作りのしおりを何枚も作ってプレゼントしてくれた。

「みんな本をたくさん読むでしょう?便利かなと思って」

図書館と本が大好きな娘らしい贈り物だった。

これからも、本が連れて行ってくれる広い広い世界で、自由に想像の翼を広げてほしい。

さて、今夜はどんな物語の世界へ旅しよう?