今年に入り、海外からのインターンシップやapprenticeship(見習い、職業訓練)の問い合わせが続いている。
国内でも、これまで何度か打診があったがほとんど実現しなかった。地理的な面で先方に負担が大きいこと、何より小さな工房だ。案件のボリュームも限られている。他の工房をお薦めしたり、立ち消えになったりした。
明治時代に多くの仏師が彫刻刀を置いたように、今も急速に仏像製作・修理という事業自体が厳しくなってきている。コロナ禍以来、廃業の心づもりは常にしている状態だ。
特に高知は全国でも寺院数が少ない県で、高齢化率もトップクラス。事業継続するのに条件が良いとはいえないかもしれない。
実際、個人様と神社様からの依頼を除いて、県内の寺院様からの依頼は現在皆無。これは何より、私たちの力不足に他ならないと自省している。
このような状態で、インターンを受け入れることは選択肢になかった。
ところが、海外からの問い合わせには驚くほど熱がある。進行的な円安や観光インバウンドの増加の影響もあるだろうが、戸惑うほどだ。
言葉の壁を理由に辞退しようとしたら、アメリカのRさんは「No problem. Craft is a universal language that can be communicated through non-verbal cues and visual demonstrations.(問題ありません。職人技は、非言語的な合図や視覚的なデモンストレーションを通じて伝えられる普遍的な言語です。)」と即答だった。
ドイツのMさんは「日本語を勉強します」と言ってくれた。
吉田仏師のことをご存知の方はお分かりいただけると思うが、基本的に無口な職人で、注目を浴びることを好まない(私が時々引きずり出すので、負担をかけているかもしれない)。海外からの要請にも、あまり積極的な反応は見せない。
しかし、私は学びたいという情熱がある人には、工房の門を開いていたいと思う。
日本の仏像は、日本で発展して洗練されてきたが、もともと外国から伝来したものだ。
互いに通じ合うものがあり、日本の仏師の技術や精神性、哲学をお伝えできるなら、相手の属性は、考慮や工夫の必要はあっても拒絶する理由にならないと考える。
吉田仏師も、師匠の背中を見て学んだという。言葉も大切だが、Rさんの言うとおり、職人の世界は今も昔も、真似や振りうつしがものをいう世界なのだろう。
まぁ、担当税理士からは「人を育ててる場合じゃないでしょう」と苦笑いされたが。