現代造佛所私記 No.37「皓月 (10)最終話」
日華が旅立って2ヶ月が過ぎた頃、テンとロイロがいつの間にか家を離れた。 テンは山道で再会し、一度は家に帰ってきた。だが、再び隙をついて脱走しそれっきりだ。ロイロはもう2年姿を見せていない。 それでも、テンはまだ山のどこか...

日華が旅立って2ヶ月が過ぎた頃、テンとロイロがいつの間にか家を離れた。 テンは山道で再会し、一度は家に帰ってきた。だが、再び隙をついて脱走しそれっきりだ。ロイロはもう2年姿を見せていない。 それでも、テンはまだ山のどこか...
嘘だ、と思った。 突然の別れを、受け入れるのはむずかしい。体に触れれば、まだ温もりが残っている気がして、目を閉じれば、いつもの声が聞こえてくる気がした。 段ボールに毛布を敷き、そっと体を寝かせる。どうしても出かけねばなら...
日華の子猫たちが生まれてから、健康管理のため体重を毎日測った。 素晴らしい健康優良児っぷりで、早々に測定をやめることになるが。 里親を探していたので、子猫たちは便宜的に「クロイチ(黒1)」、「シロクロ(白黒)」、「クロニ...
黒猫マダム・日華の臨月が判明した3日後、午前3時。 彼女は静かに産気づいた。 「ニー!ニー!」という、かすかな鳴き声が、夜の沈黙を破った。 日華はゴロゴロと喉を鳴らしながら、生まれた赤ちゃんをせっせと舐め、第2子、第3子...
8月の終わりに奇跡が起きた。 その日は、予定外の用事で帰宅が日暮になった。 「ずいぶん日が短くなってきたね」などと話しながら、星が瞬き始めた山の麓に差し掛かった時だった。 白い影がさっと車の前を横切った。 「あれ、今のっ...
猫2匹との生活が始まり、家の中が狭くなった。 先住猫の皓月(雌、生後7ヶ月)と、治療中のため隔離された日華(雌、推定7歳)は、ケージ越しに微妙な距離を保っていた。 「気が合わない猫は一生気が合わない」 動物病院でそう聞い...
涙目と一生付き合っていく運命を背負ったものの、すっかり元気になった保護猫・皓月(こうげつ)。 スクスク成長し、鹿子柄の青い首輪がよく似合うお嬢さんになった彼女は、避妊手術を迎えるまでになった。 そんなある日、不思議な因果...
山道で保護した猫の皓月は、重度の猫風邪とコクシジウム症で、治療が必要とのことだった。 自宅で駆虫剤を飲ませながら、インターフェロン治療のため5日間連続で通院した。時間のやりくりは大変だったが、とにかく元気になってほしい一...
十三夜に突然現れた白い子猫。 家に連れ帰り灯りの下で見れば、目脂でまぶたが開かない。声も掠れ、どうも匂いも分からないらしい。水すら自分で飲めず、衰弱していた。 ペットボトルの湯たんぽを作り、土間に寝床を整えた。 秋深まる...
十三夜の月が、山道をやわらかな銀色の光で照らしていた。 翌日の法要に参列するための用事を済ませ、娘と二人、車で家路を急いでいた。秋深まる山道に入ると、窓を閉めていてもかすかに湿った草木と土の清冷な香気が入り込んでくる。 ...