現代造佛所私記 No.28「皓月 (1)」
十三夜の月が、山道をやわらかな銀色の光で照らしていた。 翌日の法要に参列するための用事を済ませ、娘と二人、車で家路を急いでいた。秋深まる山道に入ると、窓を閉めていてもかすかに湿った草木と土の清冷な香気が入り込んでくる。 ...

十三夜の月が、山道をやわらかな銀色の光で照らしていた。 翌日の法要に参列するための用事を済ませ、娘と二人、車で家路を急いでいた。秋深まる山道に入ると、窓を閉めていてもかすかに湿った草木と土の清冷な香気が入り込んでくる。 ...
夜にかけて風と雨の音が強くなった。桜を散らす、春の雨だ。 「座らせて」。 書き物をする私の横に、ふわっと娘が座り込んだ。 引っ越してきた時のこと、覚えてる?と訊ねると、瞳をくるんと数秒上にむけてから、不思議そうに私の目を...
「右手の10番へどうぞ」 決して広くはない駐車場で、ハンドサインと軽やかな声が迎える。要所に配備された警備員たちが、今日も見事な連携を見せていた。 私も子どもも心躍らせてやってきたのは、「図書館」。我が家にとって一番のア...