現代造佛所私記 No.407「御仏像が決める行き先」

10年前、小田原の施主さん宅での閉眼法要に、0歳の娘を連れて行った。法衣をまとったご住職が、高知からお越しくださり、畳に座った赤ちゃんの娘に手を差し伸べている写真が残っている。 その娘が10歳になる今年、定福寺(高知県大...

現代造佛所私記 No.269「埃と泥〜文化財版アベンジャーズ」

「まもなく着陸態勢にはいります」 機内アナウンスに、はっと意識が浮上した。気流の影響で揺れが続いたフライトだったようで、機内サービスも省略されたという謝罪の声が流れている。 「もう着いたのか」 ゆっくり高度を下げる機体に...

現代造佛所私記 No.268「工事の音と三宝と」

ガタン、ガタン。ブーン。ドーン。 小高い丘の上の境内で、重機が絶えず首を振っている。 背後で「コン」と小さな音がして振り返ると、一尺ほどの板材が車のボディに泥をつけ、ぽとりと落ちた。足元のぬかるんだ地面には、似たような端...

現代造佛所私記 No.264「電動歯ブラシと背中 (後編)」

のと里山空港から最初の寺院へ向かう道中、崩れた道路や、震災後の豪雨の爪痕が、なまなましく残っていた。まだ余震も続いていた。 タクシーの窓から見る景色には、ずっとずっと昔から続く、家族の、地域の暮らしの佇まいがあった。私た...

現代造佛所私記 No.263「電動歯ブラシと背中 (前編)」

ちょうど一年前のこと。本格的な木枯らしが吹き始める直前の一週間、私たちは国の文化財レスキュー事業の一環として、能登半島地震で被災した仏像の応急処置のために能登へ向かうことになっていた。 当時、娘は小学二年生。留守のあいだ...