目の愛護デーに寄せて〜「仏像を感じる会」レビュー

参加者のお声

仏像が鎌倉時代から綿々と地元の人々から崇められ大切に守られて来た歴史を、仏像に触れられたことで、より強く感じ、素晴らしい体験をさせていただきました。目が少しづつ不自由になっていくことで、だんだん行動範囲が狭まっていたのですが、今回の企画に参加させていただき、素敵な方々とお会いできたこと、大変ありがたく思っています。

谷村菊彦さま(ロービジョン)

住職さんをはじめとしていろんな障害をお持ちの方を含め、皆で仏像を味わえたことが印象的でした。さまざまな角度から楽しめる工夫が素晴らしかったです。

別役聡子さま(香南市マーメイド)

今後は誰かとお寺様に行ったり、テレビで見たりしても、『実はねぇ…』と偉そうに仁王像に関する蘊蓄(うんちく)をしゃべりたくなっていると思います。

匿名(全盲)

10月10日「目の愛護デー」を前に、目の不自由な方・晴眼者を交えて「仏像を感じる会」を弊所工房にて開催しました。

嬉しいお言葉を頂戴しております。
ご参加くださった皆さま、開催にご協力いただきました皆さま、本当にありがとうございました。吉田沙織がご報告します。

企画のきっかけ

もともと私には、仏様の教えに触れたい・仏様を拝みたいけど叶わない人と接した看取りの場での原体験と、御仏の慈悲や知恵を造形で表現した仏像、その本質をいろんな人と一緒に捉えなおしたい、という思いがありました。

そこへ、今年の6月「仁王像の3Dデータをもとに、何かできませんか?」とりとるラボ代表の井上加代子さんが、お声かけくださったのです。その場でカレンダーをめくり、「10月上旬に目の不自由な方向けの企画をしましょう!」とご提案しました。

バリアフリー博物館(ユニバーサルミュージアム)について熱く志を分かち合った数年前。あの日からいよいよ一歩踏み出すことを感慨深く思いました。

その後は、仁王像所蔵寺院であるまきでら長谷寺さまや、檀信徒さま向けの企画書作りとプレゼン、プレスリリースの作成、チラシ作り、関係各所の皆さまとの連絡など、4ヶ月があっという間に過ぎていきました。

本当に多くの方に助けていただき、形にしていくことができました。

企画面では、オーテピア高知声と展示の図書館の西岡館長、坂本さまはじめ、ルミエールサロン(視覚障害者向け機器展示室)金平景介さま、 香南市議会議員林さま、

広報面ではPR塾講師、I’me講師の皆さま、バリアフリー観光の支援をされている(有)ファクトリー横山さまに

龍笛奉納演奏については、香風舎の中村香奈子さまに

他にもお名前をあげきれませんが、たくさんの方にお世話になりました。心より感謝申し上げます。

いよいよスタート!

実は、最初の1ヶ月はほとんど申し込みがない状態でした。が、結果的に定員5名から増席し、最終的に7名の方がご来所くださいました。

何と、分身ロボットOriHimeを介し、愛知県からご参加くださった方も!ALSという難病でほとんど指先しか動かせない状態でありながら、ロボットの遠隔操作でバリスタとして就労されている藤田美佳子さんです。香南市マーメイドの別役聡子さんのサポートで、ご参加いただけることになりました。

茶礼の後、以下の4部構成で進行いたしました。

1. イントロダクション

簡単な自己紹介と、玄徹和尚から山本玄峰老師のお話を少し。

玄峰老師は、眼病で失意のうちに四国遍路にでられ、のちに多くの功績を残されました。玄峰老師の数々の逸話についてはまた別な機会に。

2. 読経・坐禅(龍笛奉納演奏)

修理中の仁王様ですが、御仏の御前ですので読経・坐禅の時間をとり心を整えました。

3. 触察タイム

見える人にはアイマスクを着用していただき、全員「視覚オフ」の状態で3Dモデルに触っていただきました。最初は私が像の向きを口頭で誘導し、全体の造形を確認していただきます。

次に、造形の仏教的な意味や、仁王さまがどのように私たちと関係しているのかについて、竹井玄要師(まきでら長谷寺住職)から解説を受けながら、自由に触っていただきました。

そして、仏師による造像についての話や、素材である木材、接合に使う材料について解説を加えました。ヒノキと楠の木端で香りの違い、木片の肌感、カスガイや和釘、膠の触察も。

4. 「仁王さまになりきる」発表会

これまでのプロセスで、仁王さまの存在感やエネルギーのようなものをご自分なりのポーズで捉えてもらいました。

今まさに助けてくださるお姿だったり、阿吽が手を合わせてつながり(別の二体ではなく一つのものであるという表現)喜びのあるエネルギーを表現していたり、4組それぞれの解釈で個性豊かな仁王さまで、どのペアもとても素敵でした。

最後は、お楽しみの長谷寺展望台での懇親会。お弁当を広げ、和気藹々とした雰囲気で楽しくお話をしました。

この会の様子をテレビ放送や新聞でご覧になった方から「目が見えるけど体験したい!」というお声が届きました。この日は都合がつかなかったので、またぜひ開催してほしいというご連絡もいただいております。

来年の夏〜秋の修理完成前に、もう一度開催できたら良いなと思っておりますが、また準備が整いましたらお知らせいたします。

本企画では、たくさんの取材・寄稿のお申し込みをいただきました。参院選補選の告示日にも関わらず、お越しくださいましたメディア各社の皆さま、ありがとうございました(敬称略・順不同)。

読売新聞(高知版)、高知新聞、香南ケーブルテレビ、仏教タイムス、香南市広報、RKC高知放送、NHK高知放送局、文化時報