現代造佛所私記No.119「半分の台座 (4)」
事務長は、パタリと報告書を閉じて、ゆっくり深呼吸をしながら松田さんの方へ振り返った。 「お孫さん、ますます可愛くなっていらっしゃるでしょう」と微笑みながら、事務長は休憩スペースの椅子によっこらしょと掛けた。 「え?ええ、...

事務長は、パタリと報告書を閉じて、ゆっくり深呼吸をしながら松田さんの方へ振り返った。 「お孫さん、ますます可愛くなっていらっしゃるでしょう」と微笑みながら、事務長は休憩スペースの椅子によっこらしょと掛けた。 「え?ええ、...
松田さんは、県庁を定年退職した後に、事務補助として工房で働いている。文化財関連部署にいたこともあるそうだ。 「パソコン操作だけは県庁で鍛えられた」と自負していて、入力作業が得意だ。でも、最近は目の疲れがひどいらしく、...
このお話はフィクションです。私の経験をモデルに描いていますが、登場人物や出来事は創作です。「どこかの工房の物語」。どうぞお楽しみください。 僕の主な仕事は、修復した仏像の写真から図面を起こすこと。 オンラインで完結する...
このお話はフィクションです。私の経験をモデルに描いていますが、登場人物や出来事は創作です。「どこかの工房の物語」。どうぞお楽しみください。 「ちょっと変わったバイトがある」 大学三年生になる春休み、ゼミの先生からその概...
3週間ほど前になろうか。 古いタオルを雑巾に下ろそうと、デスクに持ってきた。いつでも縫えるようにと、裁縫箱も出してきた。 しかし、なかなか手がつけられず、タオルと裁縫箱はだんだんと隅に押しやられていった。 とにかくここ数...
体が重かった一週間だった。 天気のせいか、年齢のせいか。多忙だったここ数ヶ月の疲労か。 どれも当てはまるのだろう。理由はどれでもよい。ただひとつ、はっきりしているのは、どこかに無理をさせていたということだ。 昨日のコラム...
この「理髪店」には、鏡がない。誰も知らない、山奥で時々ひっそりと開く。 梅雨の終わり、雨上がりの午後の光が、静かに玄関先を照らしている。 「今日、お願いできる?」月に一度だけ、常連の男性客から連絡が入る。 午後1時半、コ...
入浴から6時間経った今も、全身がぽかぽかとしている。今日は、久々にゆっくり温泉に浸かってきた。 昨年末、お茶の役員会のビンゴで当てた、ホテル三翠園(高知市)の温泉入浴券2枚。余裕だと思っていた有効期限が、危うく切れるとこ...
冷蔵庫に、糠漬けがある。いつもは一日か二日で食べる茄子を、数日そのままにしていた。 「しまった、漬かりすぎたかな」と思いつつ、取り出してみると、いつもと少し違う深みのある香りがして、想像以上に美味しかった。 奥深い酸味と...
この数ヶ月の疲れがじわじわと溜まっているのだろうか。今日は夫婦して、からだが動かなかった。 何をするにも、ひと呼吸置いてからでないと、次へ移れない。頭はさえているのに、からだは重く、ぴたりと止まってしまったような日だった...