カテゴリー: 香りの記憶
現代造佛所私記 No.221「紫の光」
満月の翌朝。空はまだ薄暗く、少し雲がかかっていた。玄関を出ると、ひんやりとした新しい空気が肌に触れる。 娘をバス停へ送る道すがら、手を繋ぎ川沿いの小道をテクテク歩く。川向こうに熟れた柿の実が重たげに枝にぶら下がり、石垣に...
現代造佛所私記 No.218「墨の香、米の香」
メールやチャットで挨拶も事足りる時代に、和紙と筆をとる。時代遅れになりつつある行為かもしれない。けれど、こんなにも心を澄ませて、温かな気持ちにさせてくれるとは。 パソコンで文章を推敲したのち、机の上をきゅっと拭き上げ、乾...
現代造佛所私記 No.196「不動と榧」
正午の夏の名残の日差しの中で、完成したばかりの不動明王立像を撮影した。 一本のカヤ(榧)から彫り出されたその姿は、憤怒の相を現しながらも、どこか慈愛に満ちた気配を漂わせている。 施主が望まれたのは、子どもたちを守る本尊と...
現代造佛所私記No.112「水風呂」
入浴から6時間経った今も、全身がぽかぽかとしている。今日は、久々にゆっくり温泉に浸かってきた。 昨年末、お茶の役員会のビンゴで当てた、ホテル三翠園(高知市)の温泉入浴券2枚。余裕だと思っていた有効期限が、危うく切れるとこ...
現代造佛所私記No.111「糠床と罠」
冷蔵庫に、糠漬けがある。いつもは一日か二日で食べる茄子を、数日そのままにしていた。 「しまった、漬かりすぎたかな」と思いつつ、取り出してみると、いつもと少し違う深みのある香りがして、想像以上に美味しかった。 奥深い酸味と...
現代造佛所私記No.104「法友と梅ジャム」
背中越しに、クツクツと音がする。 梅シロップを漉したあとの果肉を、吉田がじっくり煮ている。手作りの木べらを片手に、語らぬ背中はすっかり「森の民」らしくなった。 恵の果実を水にくぐらせて、火と鍋で作るおいしい保存食。部屋い...











