現代造佛所私記 No.177「チャトラ追悼」
「あ、それでね、チャトラがいきましたー!」 調整の必要な案件について、ひとしきり話した後、不意に母が明るい声を放った。 そろそろか、と思っていた日が来た。5月には、ペットシッターを引き受け、じっくり一緒に過ごせたことが大...

「あ、それでね、チャトラがいきましたー!」 調整の必要な案件について、ひとしきり話した後、不意に母が明るい声を放った。 そろそろか、と思っていた日が来た。5月には、ペットシッターを引き受け、じっくり一緒に過ごせたことが大...
夕食後の台所は、食器の音と水音で少しざわめいていた。 育ちすぎたバジルを、娘にボウルいっぱいちぎってもらい、ジェノベーゼパスタにした。美味だったが、思いのほかオイリーだった。 「なんかさっぱりしたものが欲しいなあ」食後、...
今年の娘の夏休みの自由研究のテーマは、「接着剤」だ。 工作が大好きな彼女は、同じ接着剤でも木や布、陶器など、素材によってくっつき方が違うことに気づいた。 漆で継いだ食器を見て、「どうして水で洗っても取れないの?」と首をか...
今シーズン初めてのかき氷。家族で隣の市まで出掛けて、2年越しに堪能した。 夫はドライフルーツのかき氷。娘はココナッツのかき氷。私は濃い抹茶のかき氷。涼やかな甘さをそれぞれに堪能する。朝晩少しだけ涼しくなった数日、盛夏に味...
何日も前から娘は、指折り数えてこの日を待っていた。 同級生とそのご家族が、私たちの家の近くのキャンプ場に遊びに来る、と聞いてから、「あと何日?」「お菓子パーティしたい!」「お泊まりしたい!」と心が弾んで仕方ない様子だった...
正午、父が短く「黙祷」と告げた。実家の居間で、その声に合わせて背筋を伸ばす。目を閉じると、夏の光がまぶたの裏に赤く滲み、遠くで蝉が途切れ途切れに鳴いているのが聞こえた。 やがて、あたりは不思議なほど静まり返った。時計の秒...
私のパソコンや書類は、今日だけは机の隅へと追いやられた。半畳ほどぽっかり空いた机上のスペースを、小学校3年生の娘が堂々と陣取っている。 「挂甲武人(けいこうぶじん)を作る」 意気揚々と娘はサラサラと新聞紙を敷き、その上に...
太平洋に注ぐ、雲間からの光が神々しい。私たちは、日暮れの海辺に立っていた。まとわりつく湿った潮風が、ぬるま湯のように肌にからみ、じわじわと体を火照らせる。 返却期限を迎えた百年前の本を図書館に返し、その帰り道、夫と娘とで...