先日、高知県内の各支部から選ばれた小中学生が集まり、高知市内の県立図書館で自由研究発表会が開かれた。
娘も県東部代表として、参加することになった。決まってから当日までは時間がなく、大慌てで原稿とスライドをつくり、放課後の体育館や自宅で練習を重ねた。練習時間は十分とは言えなかったかもしれない。けれど当日の娘は、まるで舞台に立つような晴れやかな表情で、心から楽しそうだった。
開会式のあと、ホールに集まった審査員や先生方、保護者が見守る中、小学生低学年の部の発表がはじまった。一年生から順番に、それぞれの研究を元気いっぱいに発表していく。テーマはどれもユニークで、聞いているこちらも楽しかった。
娘は七組中六番目の発表だった。自由研究のときに使った、手づくりの「接着力を測る道具」と、クイズの番号札を手に、堂々と前に立つ。スライドを自分で操作しながら、笑顔で、よく通る声で話していく。「ワクワクしてきました!」という言葉に、会場の空気がやわらいだ。カラフルなイラストや突然のクイズに、聴衆の笑顔が広がっていくのが見えた。アドリブまで入れて、こちらが驚かされた。
発表が終わると、何人もの方が娘に声をかけてくださっていた。担任の先生は、何度も「本当によく頑張ったね」と言って、目を細めながら娘をねぎらってくださった。「感動しました。初めてここに連れてきてくれて、いい経験をさせてくれてありがとう」その言葉に、胸の奥がじんとした。
やがて結果発表のとき。
「低学年の部、最優秀賞——」
一瞬の静寂。「え?」と小さく声がもれた。前の席に座っていたご家族が振り向き、「おめでとう!」と拍手してくださる。その音に、ようやく我にかえった様子の娘。
発表のときよりも、どこかぎこちなく、緊張した面持ちで賞状と盾を受け取る後ろ姿を、微笑ましく見守った。
私はなぜか、赤子のころの彼女を思い出していた。あの赤ちゃんだった子が、堂々と発表の場に立ったこと、気後れもみせず、アドリブまでこなしたこと。
「私たちは、あの子を未来から預からせてもらっているのだ」そんな思いがはっきりと胸にこみあげた。そして、気づけばすべてが終わっていた。
小さな疑問と遊びごころから始まった自由研究。「来年は何をしようかな」と、次のテーマをあぁでもない、こうでもない、と考えている。
来月は、四国各県の最優秀賞受賞者が集い、発表するそうだ。娘のこの夏の自由研究は、もうしばらく続く。


