カテゴリー: 家族の肖像
現代造佛所私記 No.167「終戦の日」
正午、父が短く「黙祷」と告げた。実家の居間で、その声に合わせて背筋を伸ばす。目を閉じると、夏の光がまぶたの裏に赤く滲み、遠くで蝉が途切れ途切れに鳴いているのが聞こえた。 やがて、あたりは不思議なほど静まり返った。時計の秒...
現代造佛所私記No.157「挂甲武人と小さな職人」
私のパソコンや書類は、今日だけは机の隅へと追いやられた。半畳ほどぽっかり空いた机上のスペースを、小学校3年生の娘が堂々と陣取っている。 「挂甲武人(けいこうぶじん)を作る」 意気揚々と娘はサラサラと新聞紙を敷き、その上に...
現代造佛所私記 No.154「和三盆の砂」
太平洋に注ぐ、雲間からの光が神々しい。私たちは、日暮れの海辺に立っていた。まとわりつく湿った潮風が、ぬるま湯のように肌にからみ、じわじわと体を火照らせる。 返却期限を迎えた百年前の本を図書館に返し、その帰り道、夫と娘とで...
現代造佛所私記 No.148「三日月とコントロールZ」
海岸線の国道を、西に向かって車を走らせる。 予定より2時間遅れの出発で、少し心が泡だったままハンドルを握る私の視界を、ふと広げてくれたものがあった。 日の入りと共に、すうっと姿を現した細い月。 「綺麗だねぇ!」娘が後部座...
現代造佛所私記No.147「縫い上げを解く」
夏の夕暮れは、独特の不思議な空気を帯びる。いつもは閉じている過去との境目がポッカリ通じたように、黒く緩い夜風の向こうに手を伸ばせば、子どもの頃の自分に触れられそうな気がする。 今宵の六畳間は、扇風機の微かな音とエアコンの...
現代造佛所私記No.146「祝・メダカの赤ちゃん」
我が家の玄関先に並ぶ大小様々なバケツ。それはいつしか私にとって「水中の静かな宇宙」となった。 今回は、現代造佛所私記No.134で登場したメダカたちの後日談だ。 その後、彼らは元気に泳いでいる。ささやかながらも確かな命の...
現代造佛所私記No.134「干渉し合う生命」
八年ほど前から、わが家の睡蓮鉢には、世代交代をくり返しながら、メダカたちが棲んでいた。 数が増えすぎて、友人に里親になってもらったこともあったが、やがて寿命が訪れ、次第に数は減り、ついにはメダカ不在のまま、今年の夏を迎え...
現代造佛所私記No.133「見られている」
今朝、私はだいぶ寝坊をした。「お腹すいたよ」という娘に「冷蔵庫にパンがあるから食べて」と言ったあと、気づけば、また深く眠ってしまっていた。 「ジュージュー」という音で目を覚まし、台所へ行ってみると、娘がパンを焼きながら、...







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