現代造佛所私記 No.67「マンカラ」
「今日は子どもの日なんだよね?Yちゃんの日なんだよね?」 という言葉が胸に刺さる。なんとかなだめながら仕事に目処をつけ、老猫の世話をし、実家を後にした今年のこどもの日。 この日だけではない。ゴールデンウィークは、実家以外...

「今日は子どもの日なんだよね?Yちゃんの日なんだよね?」 という言葉が胸に刺さる。なんとかなだめながら仕事に目処をつけ、老猫の世話をし、実家を後にした今年のこどもの日。 この日だけではない。ゴールデンウィークは、実家以外...
夜8時。海辺の町は、闇が深い。 出先で急に発生した仕事に目処がつき、娘を連れて食料の買い出しに車を走らせた。 夜空と凪いだ海は、まるで暗幕を墨に浸したようだ。浜辺沿いの国道を北へ10分ほど走ると、このあたり唯一のコンビニ...
「水を外に撒くときはね、“どなた様も、此方様も、どいてくだされや”と声をかけてから撒くんよ」 そう教えてくれたのは、母だった。母が祖母から、そして曽祖母から受け継いだ言葉だという。 もうひとつ、何度も聞かされた言葉がある...
梅の香りが時折かすめる山あいの小さな町。麓から見る山は、いただきに白い帽子をかぶりつつも、春を待ち侘びた生き物を解き放とうとしていた。 確かな春の兆しがあるというのに、この六畳の和室では、季節の気配も、時の流れも止まって...
「うーん。どうしたものか」 昨夜、手帳をじっとみながら、考え込んだ。 翌日の午後の枠に、「参観日」と「打ち合わせ」の予定が、色違いで記入されている。 打ち合わせは前々から決定していて、参観日には行けない、ごめんね、と娘に...
今、これを書いている間に、吉田仏師(夫)が得意のビリヤニとスパイスカレーを作ってくれている。今日の夕飯は、完全に夫まかせだ。 私は土間にある仕事机でPCに向かっているのだが、そのすぐ後ろが台所なので、どうしても美味しそう...
「朝だよー」 まだ薄暗い部屋で、娘を起こす私の声かけに、もぞもぞと眠たそうにうごめく小さな体。目を閉じたまま、ゆっくりと私に身を寄せてくる。 「大好きたっち」それは、娘が赤ちゃんのころから我が家にある、朝一番のハグ——か...
朝食の準備ができてから、氏神様のもとへ。 今日は月詣りの日だ。結婚してから、よほどのことがない限り夫婦で参拝している。 今年も、桜の季節が通りすぎようとしている。鳥居の脇には葉桜が爽やかに揺れていた。 人が集うのは年に二...
日曜日の朝はゆっくりだ。体内時計優先で、光や匂い、味に素直に心開く日でもある。 夫は休みの日も、起床時間は少しゆっくり目であること以外は、作業場のルーティンを守る。 仏像に触れない日はない彼の人生を、今日も讃えたい。讃え...
娘を連れて一度、遊園地に行ったことがある。4年前の春のことだ。 5歳の誕生日のお祝いだった。 遊園地のゲートで、雲一つない青空と、やや強い風に乗ってやってくる甘いお菓子と花の香りに胸が高鳴った。 私は、はしゃぐ娘のスカー...