現代造佛所私記 No.166「音の縁」
昼下がり、実家の和室でひとり龍笛の稽古をしていた。 床の間にはお盆の飾り。金蘭の敷物に、大日如来を中心とした十三仏の掛け軸、位牌や果物、お菓子が並んでいる。ほのかに漂うお線香の香りが、しっとりと空気を満たしていた。ここは...

昼下がり、実家の和室でひとり龍笛の稽古をしていた。 床の間にはお盆の飾り。金蘭の敷物に、大日如来を中心とした十三仏の掛け軸、位牌や果物、お菓子が並んでいる。ほのかに漂うお線香の香りが、しっとりと空気を満たしていた。ここは...
昨夕、考えを整理するために、散歩に出かけた。……といっても、家の前の小川沿いの道を、ただテクテクと往復するだけだ。けれど、ずっとパソコンの前に座っているよりはましだと思い、表に出た。 夏の夕方というのは、午後と夜のあいだ...
まだ夜が明けきらぬうちに目を覚まし、台所の灯りの下で朝食を整える。 白湯を一口流し込んでは、片手でスマホの通知を確認する。メール、チャット、幾つかの確認事項。まだぐっすり眠っている娘の頬をそっと撫で、小さくささやくように...
ドイツ南西部からやってきた若きインターンMarieke。 来高三日目の朝は、氏神さまの月詣りの日だった。 彼女も一緒に行くと目を輝かせた。来高翌日は、工房での作業に先立って古刹での大きな法要に参列が叶い、その翌日は氏神様...
今日は、ヨーロッパからのインターン生Mさんを、お寺の法要へとお連れした。 到着の翌日で、まだ工房での作業は始まっていないが、日本の仏教とその周辺文化に、まずは触れていただくことができた。 「とても楽しみました」と、帰り際...
5月1日、朔日詣りの日。 私たちは月に2度、氏神様にお詣りしている。 9世帯の集落で、私たち以外に月詣りにくる姿はなさそうだ。 前回はまだいくつか花を残していた参道の桜も、すっかり葉に覆われている。 南天の細い茎が小さな...
朝の斎庭に、眩しい陽光が差し込んでいる。楽器や譜面を手に境内に入ると、すぐに汗ばむほど日差しを受けた。 澄み渡った空に、悠々と伸びる杉を見上げながら、「晴れてよかったねぇ」と声を掛け合う神官と伶人たち。 今日は、若一王子...
「今だ」 お鍋に湯を沸かしている時間。パソコンが重いファイルを開くまでの数秒。夫が食事に戻ってくるまでの数分。あるいは買い物に行く車中で。 そんな「待ち時間」が、いまの私の龍笛の稽古時間だ。 令和7年4月26日、高知のと...