カテゴリー: その他
現代造佛所私記 No.218「墨の香、米の香」
メールやチャットで挨拶も事足りる時代に、和紙と筆をとる。時代遅れになりつつある行為かもしれない。けれど、こんなにも心を澄ませて、温かな気持ちにさせてくれるとは。 パソコンで文章を推敲したのち、机の上をきゅっと拭き上げ、乾...
現代造佛所私記 No.216「百年の香り」
「お母ちゃんのお手て、温かいね。大好き!」 朝、娘と手をつないで、いつものようにバス停へ向かう。山の朝は半袖だとブルっと震えるくらい秋が深まっている。 日陰の小道を曲がった瞬間、柔らかい陽光と金木犀の香りにふわっと包まれ...
現代造佛所私記 No.215「玄関先の緑」
玄関先のプランターには、バジル、ミント、パセリ、タイム、ローズマリー、ラベンダ──。 小さな庭のように、いくつものハーブが根を張っている。 始まりは、実家からもらった一本のローズマリーの枝であった。短い枝先から根が出て、...
現代造佛所私記 No.214「ベルリンからの便り(後編)―小さな芽から」
(前編まとめ) 七月上旬、ベルリンに住む青年Mさんから一通のメールが届いた。「あなたの仕事が木工家具とは直接関係がないことは承知しています。無礼な申し出と思われないかと案じておりますが、日本で木工や家具製作の実習先を見つ...
現代造佛所私記 No.213「ベルリンからの便り(前編)―偶然の符合」
七月上旬のことだった。ベルリンに住む青年Mさんから、一通のメールが届いた。 「あなたの仕事が木工家具とは直接関係がないことは承知しています。無礼な申し出と思われないかと案じておりますが、日本で木工や家具製作の実習先を見つ...
現代造佛所私記 No.212「小夏とはらぺこ青虫」
昨年の夏、実家で採れた小夏を家族で食べた。娘が種を「ぺっ」と吐き出す。その粒を空いた鉢に埋めてみたら、やがて芽が出た。苗木は五つ。今ではどれも一尺ほどになっている。 芽が伸び始めたころ、夫と「どうしようか」と話した。地に...
現代造佛所私記 No.207「石段」
彼岸花の赤が道端に燃え、フジバカマの薄紫が風に揺れている。柿の実が重たげに色づき、青い柚子がぽってりと膨らみはじめた。 誰もいない細い参道を歩けば、雨上がりのぬかるんだ土が、チャ、チャ、となる。サラリとした微風が耳たぶを...











