現代造佛所私記No.89「インターン(16)」

ドイツから来たインターン生・Marieke。工房での作業は、ついに最終日を迎えた。

Mariekeの彫る虚空蔵菩薩の仏頭が、確かな輪郭を現してきた。仕上げはドイツに戻ってからだが、その姿からはすでに作品への深い愛着が伝わってくる。

完成したら写真を送ってほしいと伝えると、「もちろん!支援機関にもレポートを送ることになっているので、たくさん書くと思います。あなたたちにも送りますね」と笑った。

印象に残っていることは?と訊ねると、「全部です」と即答。工房での制作、寺での法要、茶道や弓道の体験、そして毎日の食事と、猫たちとの時間までも。仏像とその周辺に広がる日本文化にたくさん触れ、自然と親しみ、その過程で、私たちの方が多くの気づきを与えられていた気がする。

作業終了日の夕飯は、Mariekeが担当してくれるという。「シンプルなパスタ料理を作ります」と。その気持ちが嬉しかった。

12月に首を痛めた彼女は、時折患部を温めながら、それでも3週間近く初めての国、初めて会う私たちと、明るく楽しく、そしてものすごい集中力で走り抜けた。趣味は?と聞けば、「Carving!(彫刻です)」と即答する、まっすぐな人だ。

家族の一員のように、食前には箸を並べ、お茶を入れてくれる。キッチンの引き出しも冷蔵庫も自由に開けながら、リラックスしている。今日は私もノーメイクのまま、彼女とテーブルを囲んでいた。そんなふうにリラックスできるのは、彼女のオープンで温かい人柄のおかげだと思う。

夕食には、ハーブとアスパラガスのオイルソースパスタを作ってくれた。スパゲッティの量を私が量っていたら、数本が転がり落ちた。Mariekeが突然、真っ直ぐ私の目を見て、「Do you know Mikado?」と彼女が言う。「帝?emperor?」と首を傾げる私に、スマホを差し出した。ドイツで盛んなゲームのことらしい。あとで箸でやって見せてくれるという。互いの知らない国のことを分かち合える毎日が、本当に楽しかった、と改めて思う。

「Next time…」と笑い合いながら、またの再会を願う。たとえそれが叶わなくても、この約3週間は、私たち家族にとって確かな記憶として残るだろう。

明日は、彼女の実家の家業に関わる製茶について、高知の企業様を訪ねる予定だ。