1月上旬、香積寺さま(愛媛県東温市)にて、檀家さまのご本尊製作に先立ち、御衣木加持(みそぎかじ)が執り行われました。関係者皆さまから掲載のご許可をいただき、報告いたします。
仏像を彫る木材を御衣木(みそぎ)と呼び、その御衣木と仏師、道具、場所を僧侶が清め、施主がのみ入れする儀式を御衣木加持といいます。
なぜ衣の字を当てるのか不思議に思っていましたが、完成時に開眼法要や御霊(みたま)入れをすることを考えると、像は仏様の魂をお包みする衣だと合点がいきます。
工房では、加持当日までに意匠を相談したり用材を準備するほか、施主であるT家当主さまが発願に至られた経緯に思いを馳せ、満願成就を願って造像の功徳が説かれたお経を写経して過ごします。
作法はときどきに応じて異なりますが、今回は施主さまの菩提寺にて行われました。
当日準備に伺ってはじめて、平野副住職も大切に準備を進めてくださっていたことを知り、大変感動いたしました。
御像に納めるお札は、四国中央市新宮町の手すき和紙職人、大西満王さんの抄造。
大西さんは、香川県のお香の製造販売会社「 一」さんと協力して、丁子で染色する平安時代の高級和紙を再現されました。防虫・劣化防止の効果があり、耐久性にも優れているそうです。
参考記事:平安期の手すき和紙再現(2023.12.10 読売新聞オンライン)
今回平野副住職がご用意くださったのは、その和紙で作られたお札。御舎利とともに大切にお預かりしました。
ご家族が仏様が宿らんとする御衣木の前で頭(こうべ)を垂れ合掌すると、はしゃいでいた子どもたちもじっと座って手を合わせていました。
荘厳な堂内、腹に響くお経と太鼓、塗香(ずこう)の香り、初めてののみ入れ。
小さな彼らの記憶に刻まれたことでしょう。
T家の皆さまの健やかな日々、末長いお幸せを心よりお祈り申し上げます。
御衣木加持を経て、T家の皆さま、香積寺さまとご縁をより深め造像にあたれることは、私どもとしても本当にありがたいことです。
仏師は人の願いを預かり、施主に代わって造仏にあたる代理人なのだと、その責任を噛みしめる時間でした。
合掌低頭