現代造佛所私記No.139「ひぐらしや」
蜩や 暗しと思ふ 厨ごと 中村汀女 夏の記憶にはいつも「ひぐらしの声」がある。そして。この句をふと思い出す。 それは夏の終わりの気配ではなく、夏の1日の終わりを告げる、静かな合図だ。 梅雨が戻ったかのような曇天の午後。小...

蜩や 暗しと思ふ 厨ごと 中村汀女 夏の記憶にはいつも「ひぐらしの声」がある。そして。この句をふと思い出す。 それは夏の終わりの気配ではなく、夏の1日の終わりを告げる、静かな合図だ。 梅雨が戻ったかのような曇天の午後。小...
ご縁が巡り、思いがけない場所で、心響く詩に出会った。 㴩湖山寺(ようこさんじ) 空山寂歴道心生 虚谷迢遙野鳥声 禅室従来塵外賞 香台豈是世中情 雲間東嶺千尋出 樹裏南湖一片明 若使巣由知此意 不将蘿薜易簪纓 ...
結んで、ほどいて、また結んで。日にいったい何度、この手は繰り返しているだろう。 私の暮らしには、三つの「紐」がある。作務衣の紐、仕覆の緒、そして仏像を包む薄葉の紐。今日は、その話を。 作務衣の紐 朝の工房。まだ薄暗い深緑...
雲とは、不思議なものだと思う。天と地、神と人、この世とあの世……そのあいだに、もくもくと雲が現れ、“向こう側”の気配を漂わせる。まるで、舞台装置のようだ。 今日は、二つの雲について考えてみたいと思う。 ひとつめは、気象と...
応援してくださる方から、「ちゃんと休んで」とお優しい叱咤を受けつつ、今夜も深夜に筆を取っている。 午後は茶道の稽古があった。久々の略点前でお抹茶を二服いただいた。稽古でいただくお茶は、どうしてあれほど美味しいのだろう。 ...
八年ほど前から、わが家の睡蓮鉢には、世代交代をくり返しながら、メダカたちが棲んでいた。 数が増えすぎて、友人に里親になってもらったこともあったが、やがて寿命が訪れ、次第に数は減り、ついにはメダカ不在のまま、今年の夏を迎え...
今朝、私はだいぶ寝坊をした。「お腹すいたよ」という娘に「冷蔵庫にパンがあるから食べて」と言ったあと、気づけば、また深く眠ってしまっていた。 「ジュージュー」という音で目を覚まし、台所へ行ってみると、娘がパンを焼きながら、...
ときどき、小学生の娘が「大好き!」とだけ言うことがある。 それは、私や夫が彼女に何か好ましいことをしたときだけではなく、なんの脈絡もなく、唐突に発せられることが多い。 「お母さん」と呼びかけるような調子であったり、「わた...
午後、Facebookに一つの投稿をアップした。「ことばの種、お預かりします」という、1000日コラムの夏の特別企画である。 これは、誰かがふと思いついた「ひとこと(単語)」をお預かりし、それをもとに私が5つのエッセイを...
短い梅雨を経て、屋根の上を見上げると、野薔薇の新芽が、空に向かってぐいと手を伸ばしている。その若々しい淡い緑の、なんと屈託のないことか。 この野薔薇は、もともと実家の裏庭に咲いていたものだ。母から20cmほどの小さな一枝...