10年以上前になるが、私は東京で作家の個人秘書をしていた。
文献を集めたり、編集を手伝ったり、出版社と打ち合わせに同席したり。いざ本が出れば、出版社の営業さんと一緒に都内の書店を回って、店員さんにご挨拶したりもした。
当時いただいた名刺を今も持っているけど、その書店自体がもうなくなっていたりする。今もある書店でも、そのスタッフさんはもういらっしゃらないことも多いだろうなぁ。そう思うと少し寂しい。
上司である著者はカウンセリングもしていたので、そのクライアントさんにご協力いただいて、Amazonで初速をつけたり(なんと、あのスティーブ・ジョブズの本を一瞬押さえてランキング1位という称号を得た)、出版記念講演会を企画して、それなりに売り方を工夫をしてはいた。
だけど、売上はなかなか思うようには上がらなかった。本が出版されるたびに、どうすれば多くの人に読んでいただけるのか?と手探りだった。
結局売れ残った本は書店から出版社に戻されて、しばらくすると連絡がくる。処分するのでよかったら割引で買取が可能、という。そうして倉庫に在庫を抱えたり、出版社から連絡もないまま処分されてしまっていた本もある。魂を込めて執筆・編集した一冊でも、現実は厳しい。
そんな手探りの中で、運よくメディアに取り上げていただいたことがあった。これで本も売れるかもしれない、知ってもらえるかもしれない、と期待した。
だけど、ある雑誌に掲載された後、かかってきた電話は、広告の営業と、スマホサイトを作りませんかという売り込みだった。
そんな売り込みの対応にリソースが割かれるばかりで、肝心の本の売り上げや、新たな仕事にはつながらない。メディアに出るとろくなことがない、とすら思った。
その雑誌記事を見たテレビ局から、出演のオファーもあったが、上司は簡単に断ってしまった。
今ならわかる。本当にPRのピの字もわかっていなかったのだ。(続く)


