現代造佛所私記 No.337「節分の支度」

「おいしそう〜」

節分の豆や、ヒノキの一合升を並べていると、インフルエンザから解放されたばかりの娘が、頬を上気させながら台所を覗いていた。

節分前の休日は、立春のお札作り、掃除、そして節分の支度。

「これはね、節分用の豆だからね。Yちゃんのおやつは、カゴの中にあるよ」

「やったぁ!」

今度はスナック菓子に目を輝かせる娘に、あとで立春大吉のお札を一緒に作ろう、と声をかけてみる。

「うーんとね、宿題があるから……」

体よく断られてしまった。仕方がないので、ストックしてある和紙の中から良さそうなものを二枚取り出し、ささっと折って、金色の帯を添えた。

厄除けと招福を願い、「立春大吉」の文字をしたためて完成である。

結婚してから、毎年、日付が立春になったら「立春大吉」の札を玄関と作業場に貼っている。高知に移住してからは、お札を手作りするようになった。

折鶴が折れる人なら、このお札もきっと簡単に折れるだろう。

西暦の年末年始ほどの忙しさはない、この昔のお正月が、私はなんとなく好きだ。今年は年賀状も立春のご挨拶にして、そこそこ掃除をし、静かに迎える準備を進めている。

三月の雅楽のミニコンサートで春らしい曲を演奏しようと、双調の課題曲をBGMにしながら、春の始まりを迎える支度。

良い休日だった。

※双調:雅楽における「六調子」の一つ。春の息吹を感じさせる、明るく軽やかな響きが特徴の調子。