現代造佛所私記 No.233「小さな発表者」
大きく開いた窓から、夕方のやわらかな光がさし、教室の影と溶け合っている。児童の姿のない放課後、私たち夫婦は娘の教室にいた。 黒板には、明日の予定が丁寧に板書され、色とりどりのグループ分け表や子どもたちの愛らしい絵が並ぶ。...

大きく開いた窓から、夕方のやわらかな光がさし、教室の影と溶け合っている。児童の姿のない放課後、私たち夫婦は娘の教室にいた。 黒板には、明日の予定が丁寧に板書され、色とりどりのグループ分け表や子どもたちの愛らしい絵が並ぶ。...
今日で四度目となる、生涯大学での講義。 それぞれ別のクラスゆえ、この話を聞くのは初めての方ばかりである。一クラスおよそ百名。単純に数えれば、これまでに四百人ほどの方々に、私たちの工房の造仏や修理についてお話ししたことにな...
今日は「彰子」と書いた。小学校の連絡帳に記す、私のサインである。 「吉田」とは書かない。今年の二学期から、娘との小さな約束があるからだ。 それは、連絡帳のサインがわりに、歴史上の人物の似顔絵を描くこと。いや、人物ではない...
今朝は月詣りの日だった。吉田仏師と連れ立って、参道を歩く。 石段を三分の一ほど上がると鳥居がある。一礼してふと目の端に蠢くものを捉えた。鳥居の向こう、石段の左際に、黒と黄の影が群れて揺れている。スズメバチだ。地面を這うよ...
本日、お茶の稽古で「花月」をした。 七事式という、集団で行う茶の湯の稽古法のうちの一つである。遊戯性があって好きなのだが、稽古する機会が少なく、ルールがまだ掴めていないというのが正直なところだ。 「折据」という、五枚の札...
先日、温浴施設で倒れた人の対応をした。そのお礼にと、入浴券をいただいた。家族で早速、再訪する。 低温の塩サウナと高温遠赤外線サウナ。二つの熱を楽しんだ。翌朝、目覚めた時は心地よかった。体がポカポカと温かい。ところが午後に...
終齢になった芋虫たちが、ある朝、妙に騒がしそうだった。枝から枝へ、地面へ。まるで何かを探しているみたいに、せわしなく這いまわっている。 気づくと、メダカの住まう睡蓮鉢の縁に、ハーブのプランターの脇に、あるいはアスファルト...