現代造佛所私記 No.265「能登で出会った人と仏像」
昨年の晩秋、能登へ赴いた。国の文化財レスキューの一環として、震災で被害を受けた寺院を巡り、仏像の応急処置を施すためである。 訪れた寺はどれも、地震の爪痕を生々しく残していた。廊下の板が抜け落ち、境内の一部が土砂もろとも崩...

昨年の晩秋、能登へ赴いた。国の文化財レスキューの一環として、震災で被害を受けた寺院を巡り、仏像の応急処置を施すためである。 訪れた寺はどれも、地震の爪痕を生々しく残していた。廊下の板が抜け落ち、境内の一部が土砂もろとも崩...
生涯大学での「仏像と人の物語」は、今日で6組目を数えた。 クラスが変わると人が変わる。当たり前のことだけど、教室の空気は毎回違う。それぞれにはっきりと個性がある。一方で、同じところで笑いが起こり、似たような場面で目頭を押...
「このままでは終われない」 コロナ禍で工房の仕事が途絶えたとき、胸の奥からそんな声が聞こえた。仁王さまの修理で感じた”伝えることの力”を、もう一度信じてみようと思ったのだ。 初めて取材してもらった...
「またマスコミが来てくれるろう? がんばらんとな!」 高知県香南市の山あいの寺に、ひょうきんな声が響いた。檀家会でのことである。その明るい笑いに、場の空気がふっと緩んだ。私も思わず笑顔になった。仏像工房の経営者として、こ...
秋冬用の掛け布団を夫が出してくれた。天日に干し、シーツを洗い、追われるように秋支度をしている吉田家である。 9匹いたアゲハ蝶の芋虫も、一匹残された末っ子がそろそろ蛹化の準備を控え、柑橘の葉を独り占めしている。剥き出しの肌...