山々の上で雲に乗り、悠々と泳ぐ鯨の神様。
はるか昔から遠い未来までを見通し、山の麓に住まう人々を守っています。
「仏像を作るのと同じ技法で鯨の神様を造っていただけませんか」とご依頼くださったのは、木のおもちゃ工房「山のくじら舎」(高知県安芸市)の萩野和徳社長です。
土地の神様の遣い・会社の守護神としての鯨とは、どんなお姿でしょう。
その姿を求め、安芸市の会社周辺を歩いてみたり、工房のおもちゃ作りの様子を拝見したり、鯨資料館に行ってイメージを膨ませました。
最終的な意匠は、萩野社長のおもちゃへのこだわり、木工産地を作る夢やお志、伝統文化守るための地道な活動に触れたことに大きく影響を受けたように思います。
木材は土佐ヒノキを用い、仏像をお造りするのと同じ方法で玉眼を嵌入しました。軽量化と干割れ防止、また玉眼を入れるために内刳りを施しています。
瞳の色は、10種類以上の候補の中から、落ち着いた色味が選ばれました。実は「少し控えめすぎるだろうか」懸念もあったのですが、水晶(山梨県産)と合わせてみると落ち着いた青色に光が際立ち、むしろ山と海に囲まれた土地にふさわしい、太平洋と空を思わせるような発色となりました。
そして今夏、鯨神の胎内に萩野社長の願いを認めた墨書をお入れし、無事完成いたしました。
納入した墨書は、高知の書道家・福原曉雲師のご揮毫です。手漉きの土佐和紙(抄造:尾崎伸安氏/いの町)の上に、日本国の平和と関係者一同の安寧への祈りが込められています。
現在、土居廓中(安芸市伝統的建造物群保存地区)の再生・リノベーションされた武家屋敷にご安置されています。萩野社長も大変喜んでくださり、ほっとしたことでした。
山のくじら舎の皆様と、工房で生まれたおもちゃやグッズを手に取る全ての人、そして地域のご神像として土地の営みを末長く見守ってくださることと思います。
山のくじら舎さんは、安心・安全な質の高いおもちゃ作りをされているのはもちろん、さまざまな企業のノベルティも製作されています。我が家では、子供が2歳の頃に「ままごとセット」を購入しました。4年経った今も、時々遊んでおります。幼稚園の料理体験の前日には、予行練習にも使っておりました(笑)。
少しでもご興味を持たれた方は、山のくじら舎さんのウェブサイトをぜひご覧ください。皇室でも愛用されている、優しくてアイデアあふれるおもちゃの数々は、見ているだけでも楽しく温かい気持ちになりますよ。