現代造佛所私記 No.401「山の藤が、茶室にも」

桜と藤の花が、淡く山を彩る土佐の卯月。

ヒラヒラ花びらが舞う山道を走りながら、茶の湯の稽古へ急ぐ。

4月といえば、釣釜・旅箪笥の設え。
春と初夏の境目の、この時だけの揺らぎの茶室を思い出し、心弾んでくる。

だが、感冒で小休止した弥生のうちに、釣釜・旅箪笥の設えを終えられたと聞き、内心しょんぼりしてしまった。茶会との兼ね合いや弟子の進捗に応じて、室礼が季節を前後するのはいたしかたない。

また来年の楽しみにしよう。

今日は、総飾りのお点前をすることになった。 帛紗をつけ、水屋でお茶碗を選ぼうと棚を見ると、尾戸焼の藤の花の絵付が目に入った。

往路で見かけた山の藤が、こちらにも。そうだ、もう季節は先に進んでいる。

茶の湯をしていて幸せに思うのは、季節と共にあれること。 辛いことも、苦しいこともあるけれど、季節はいつも一緒に歩いてくれる。

「考え事しながら歩きゆうやろ」

姉弟子にピシリと指摘された。ひと月稽古が空いてしまって、手順を胸の中で反芻しながらお茶室に入ったことを見抜かれてしまった。和やかな笑い声が起こる。

あぁ、季節どころか、考え事をしながら歩いてしまった。

忘れていることも、覚えていることもある。前に指摘されたことを、同じように指摘される一方、できるようになったこともあった。

小さな小さな歩みが果てなく続く。

来月から、風炉になる。 季節がまた巡る。