現代造佛所私記 No.393「インターン(20) 後日談—そのままの音」

Is spring slowly starting where you are as well?

英語のメールが届いた。私たち夫婦、そして娘の名前が宛名に並んでいた。日本でのインターンシップのことをブログに書いた。変えてほしいことがあれば教えてほしい、と。

差出人は、昨年5月に3週間工房に滞在したインターン生、Mariekeだ。

彼女は、続ける。書きながら、たくさんの思い出が戻ってきた、とも。

ナスの照り焼きをとても気に入って、レシピを聞いてくれた。Aubergine——ドイツ語でナスのことをそう呼ぶのだと、あの頃に覚えた。

彼女のHPリンクを開くと、ドイツ語のテキストの中に、見慣れた文字が混じっていた。Bosatsu。Busshi。Hinoki。そして、工房での作業の様子、日本各地で巡った地の写真の中に、娘が手描きしたウェルカムフラッグもあった。

仏師が、そのまま言われる世界になるといい、私には夫と工房を立ち上げてからずっとその思いがあった。彼女も、その世界に一歩踏み出した。

彼女とは、食事の度に会話が尽きることがなかった。そんな時に、話したことがある。工房を運営していくにあたって、書類やSNS発信、HPの開設は大切であること。吉田仏師はパソコンを一切使わないので、見積書や契約書、HPに関することは、私が引き受けている。SNSも苦手であるけど、Mariekeはどう?と。

Mariekeは、うんうん、と深くうなずいて言った。「私もそれが苦手。だからあなたがいる吉田仏師が、うらやましい」と。

その彼女が、ブログを書いた。書き上げた。そして書きながら、私たちと過ごした日々を、もう一度味わっていた。

苦手だけど、怯まず、たしかに歩み続けている。自らの可能性を信じる彼女の笑顔が浮かぶ。

Thank you again for your beautiful words. We hope to see you again someday.

返信の文末に書き添えた。

Marieke、高知の山にも、春が来ているよ。

ドイツの木彫家、Mariekeのブログはこちら▶︎

アイキャッチは、Mariekeのブログにもある、Kyūdō-Einheitenの様子。