昨夜は、地元の日本語サロンへ。
開始半刻ほど前に会場に入ると一番乗りだった。担当者さんが朗らかに迎えてくれて、進行を簡単に分かち合ってくださった。
案内された椅子に腰掛け、会場を見回すと、これから始まる交流の胎動が感じられ、自然と胸が踊る。
整えられた机と椅子、テーブルには小さな焼き菓子と日本語プリント、雲中奏楽団の演奏会のチラシがきちんと置かれていた。こうして毎回、学習者さんたちは大切に迎えられているのだろう。
仕事終わりだろうか。開始直前に続々と入ってきて、気づけば二十名を超えていた。以前は数名だったと、あとできいた。「担当の◯◯さんの熱意の賜物です」と、別の職員さんが教えてくださった。
フィリピン、アメリカ、イギリス——それぞれの国からきた学習者と日本人ボランティアが、日本語で言葉を交わしている。うぐいすの鳴き声を聴いて音写して皆で発表しあったり、好きな季節を話したり、ホワイトデーのお菓子とお茶を囲んだり。
楽しく過ごしながら、はたと気づく。
そういえば、雅楽を聴いたことのないこれだけの外国人の前で、ひとりで吹くのは、これが初めてではないか。
数日前に思いついて、日本のアニメの曲あてクイズを用意していた。事前に音色を聞いてもらった日本人スタッフもボランティアさんも「知らないなぁ…そのアニメは見てないなぁ」自信なさそうだった。それなら、ひとまず聴いてもらうだけでいいかとも思った。
前に立った。
「皆さん、日本のアニメは好きですか?」
「はーい!好きです!」
そんなふうに言われると、私の口は勝手に始めてしまった。
「それではクイズです!どのアニメの曲か、わかった人は、手をあげてください」
賭けに出た。
会場の反応を見ながら龍笛を吹き始める。皆こちらをじっと見てくれている。しかし、表情が読めない。知らなさそう…これはクイズにならないかもしれない、最後までただ吹き通すしかないのか?「世界のハヤオミヤザキ」の作品だよ、と心でヒントを繰り出すが、口元は笛で必死なので喋れない。
——手が上がった。
無事、正解が出て安堵した。もう一曲も、昨年世界的にヒットした鬼退治のアニメで、こちらは割とあっさりと正解が出た。
アメリカの女性と、フィリピンの女性だった。どちらも、日本語がとても上手な方々だった。
その後、陪臚がベトナムから渡ってきた話をすると、みな目を丸くした。千年以上前に、大陸から日本に渡り、演奏されつづけている。世界で一番古いオーケストラと言われています、と言葉を添えると、さらに驚かれた。
奇しくも、日本語サロン一年の最後のクラスで、よく出席した人への表彰式があった。担当者さんから所望され、越天楽を柔らかく添えた。
もうすぐ終了という頃、「最後に何かもう一曲」と担当者さんに促され、坂本九さんの「見上げてごらん夜の星を」を吹くことにした。担当者さんにも歌ってもらった。あたたかいひとときだった。
「スラムダンクが好き」「僕は幽遊白書」「ナルトもあったね〜」——クイズの後は、フィリピンの方々とアニメの話をした。
多少の粗など、一緒に笑顔で話せた夜のスパイスになる。
帰り際に、「今日はありがとうございました、私○○といいます」と、歩み寄ってきてくれた人がいた。胸がほこほこした。
風の強い、寒の戻りの夜だった。


