現代造佛所私記 No.356「撫でられた仏様」

以前、吉田仏師が個展をした折、そのニュースをご覧になり、「仏像をお願いしたい」と思ってくださった方がいらした。

人づてにご連絡くださって、数年を経て、ついにお会いすることになった。

そして昨日、その方が発願されたお仏壇に祀られる、お仏像の開眼法要が営まれた。

ご発願されたのは、大切なご家族の御霊のためにと願われた三尊の仏様であった。

菩提寺にて、住職さまが手厚く法要を執り行ってくださった。静かな堂内に、朗々と読経の声が響く。香煙の向こうに、白い木肌が真新しい三尊がおわした。

お焼香の折、私は龍笛を短く奉納させていただいた。開眼のお祝いと、尊像と施主様、縁者の皆様のこれからを祈って。

開眼を終え、ほっとリラックスした空気になると、吉田仏師が「近くでご覧になりますか」と如来様をそっと施主さまに手渡した。

「まぁ…!なんていいお顔なんでしょう……」

胸の奥から滲むようなお声であった。そして、生まれたばかりの我が子に触れるように、そっとお顔を撫でられた。個人の施主様だからこその、かけがえのないひとときだと思った。

その後、ご自宅にご一緒して、お像をお運びした。

仏間で、施主さまが涙声で、先立たれたご家族に語りかけられた。

私は、その傍で、胸が一杯になった。長い長い時間が、そこに詰まっているように思えた。

ご依頼いただいてから二年で完成した。だけど、お待ちいただいたのは、もっとずっと長い歳月かもしれない。発願に至られるまでの、深い悲しみを抱いていらした月日の重さを思う。

今日からは、この三尊がそこに在る。

日々のお勤めが、より幸せな時間になりますように。そして、そんな毎日が、心穏やかに、お健やかなものとなりますように。

アイキャッチは、ノミ入れの時の施主様と吉田仏師の手。ご本尊となる木。