現代造佛所私記 No.344「雪の日の足止め」

午後から雪の予報は出ていた。

けれど、こなつさんは「大丈夫」と言って、軽トラックでやって来た。いつもの、レトロモダンな着物姿で。PR講座のチラシを取りに、わざわざ。

同じ市内に住むPRプロデューサー仲間で、1000日チャレンジを一緒に続けている友人である。

「お茶を一杯だけでも」

そう声をかけたのは、せっかく来ていただいたのだからご馳走させて欲しい、という気持ちだった。だけど、そのたった一杯のあいだに、雪は思いのほか深くなってしまった。

帰路、車が進めなくなり、急きょカフェ兼キャンプ場の部屋に宿泊していただくことになった。幸いなことに先客はおらず、部屋をひとつ確保できた。

私は慌てて家に戻り、冷蔵庫やコンテナを開けて食べられそうなものを探し、タンスから部屋着を引っ張り出す。雪道をもう一度戻るころには、足元の雪はさらに厚みを増していた。長靴に履き替える。

薪ストーブの前でゆったりとくつろぐこなつさんの姿を見て、ホッと胸をなで下ろした。当のご本人は落ち着かれていて、こちらの慌ただしさが、かえって気恥ずかしくなるほどだった。

「忙しいのに、ごめんね」

そう声をかけていただき、こちらこそ、と何度も繰り返した。お引き留めしなければよかったという思いと、もう少し慎重であるべきだったという悔いが、同時に胸をよぎる。

本当は、夜も語り合いたい気持ちがあった。けれど家のこともあり、ひとまず無事に泊まれる段取りが整ったことを確認して、私は雪の道を戻った。

行きも帰りも、いつもの細道である。見慣れた景色が、今日は少し違って見える。さっきまでの私の足跡は、ふわふわの雪に、やさしく消されていた。

――だけど、内緒だけれど。

友人がすぐそばに泊まることになったこと、それが雪の夜であることに、正直、どこか心が躍っている自分もいる。

楽しんでしまって、ごめんなさい。

しんしんと降り積もる雪を被るキャンプ場に向かって、そう胸の内でつぶやきながら、私は雪道を急いだ。