昨年、夏休みの自由研究の件で、娘は地元のケーブルテレビの取材を受けていた。本日がその放送開始日で、録画していたその特集を、家族で観た。
娘はどこか照れくさそうで、テレビを見たり、ゲーム機に目を落としたり、落ち着かない様子である。
特集のタイトルが画面に映し出された、その瞬間だった。居間の空気を切り替えるように、娘がぱっと顔を上げた。
「『接着剤』に恋した少女。四国の舞台へ〜」
その副題を見て、娘はすぐに言った。
「初恋(の相手)は、ちがうよ」
次の言葉を待つ私たち夫婦の顔を、交互に見てから続ける。
「Yちゃんの初恋は、工作だよ!」
少し考えるようにして「……あっ、その中に接着剤も入ってるか!」と笑った。
まるで、「あの子に恋しているんじゃない。人間に恋しているんだ」と言われているようで、思わず笑ってしまう。そんな抽象的な思考ができるようになったのかと、驚きつつ。
画面の中の娘もまた、好きな教科を尋ねられて、ディレクターさんの質問が終わる前に「図工!!」と即答していた。その瞬間、会場にいたクラスメートたちの笑い声が、わっと広がる。そうそう、Yちゃんは図工が好きだよね、という雰囲気だった。
とにかく、娘の初恋のお相手は、人ではないそうだ。照れ屋の娘らしい。でも、夢中になれるものに出会えたのだとしたら、それはやはり、めでたいことだ。
特集の中では、娘の自由研究の背景として、仏師である夫の仕事の様子にも、さりげなく触れてくださっていた。工房の片隅で、漆を扱う娘を見守る様子、扱い方をやってみせる様子が映し出されていた。
最後に、将来の夢を尋ねられたとき、娘はこう答えていた。
「美術館のお仕事と、両親と一緒に、仏像を直す仕事がしたいです」
テレビの前でその言葉を聞きながら、私も夫も、異口同音に「好きなことをしたらいいよ」と彼女に伝えた。
初恋は工作。
娘がものを作る喜びに出会った場所には、いつも木の匂いと、仏像と、父の背中がある。好きなものに、まっすぐ恋をする。それは時に苦しさも伴うけれど、やはり豊かなことだ。
娘の自由研究に付き添った先で見たのは、「純粋な好き」の力であった。


