現代造佛所私記 No.304「ドイツの職人とアロマ」

大掃除も新年の飾り付けもひと段落したころ、ふと思い出したものがある。ドイツの家具職人、ミラン氏から届いていた贈り物だ。

日本でのインターン先を探していた彼に、高知の家具職人さんを紹介した、そのご縁だった。

小さな天然石と、精油。ボトルには詩的で丁寧なメッセージが添えられていた。

「ブランデンブルクの森より」

5種類の木の精油をブレンドしたもののようだ。

もっとも、その精油は、ひと月ほどオブジェになっていた。精油が固化してしまって、蓋がどうしても開かなかったのだ。デスク脇に鎮座していた。

夫にペンチで開けてもらって、やっとその香りに出会えた。仕舞い込んでいたアロマポットと、ティキャンドルを出してくる。てっぺんの窪みに水を張り、精油を垂らす。

少し待つと、爽やかなウッディの香りが、ゆっくりと空間に広がり始めた。

お香を焚くことの多い我が家には、少し趣の異なる香りである。それが、思いのほか心地よい。

「ミランさんは今ごろ、どうしているだろうね。」

レポートに追われ、クリスマスを過ごし、また木に向かっているだろうか。ふとした時に夫との会話の中に彼は登場する。異業種ではあるが、木に携わる職人ということで、勝手に連帯感を抱いているのだ。

結局、日本では会えずじまいだった。それでも、帰国後に届いた彼のメールは、実に丁寧で、喜びに満ち、何より温かかった。

今年は、どういうわけか、ドイツの職人との交流が続いた。彼の国は、遠いはずなのに、どこか近い。

この香りを嗅ぐたびに、彼との温かなやりとりを思い出すのだろう。

「In deep gratitude」

の文字を、ゆっくり追いながら、心の中で若き職人の未来を思う。

ミラン、元気で。