現代造佛所私記 No.302「年の瀬のお餅つき」

お寺の檀家さんやお知り合いに混ぜていただき、当工房も年末恒例の餅つきに参加した。

一晩水に浸した二升のもち米ともろぶたを抱え、いざ出陣。

舞台となるお寺の庫裡前に到着すると、すでに蒸しあがったもち米の香りが、冬の空気に芳しく溶けている。

「吉田さんは大事な腕やき、傷めんように」

そんな声をかけていただきながら、吉田仏師は、冬の澄んだ空の下、最後までしっかりと杵を握り、餅をつききった。

腕が重い、とこぼしつつも、檀家さんと交代して、臼の中の餅米を、見る見るうちに仕上げていく。

臼から運ばれるつきたての餅は、まるで生まれたばかりの赤子のようだ。そのつきあがった餅を、成形するのは女性陣。

私もその輪の中で、ひたすらちぎっては丸めた。

人手が足りているときには、餅つきのリズムに合わせて、笛を吹いた。吉田家の餅には、越天楽を聞かせてやった。「いいねぇ!」と尼僧さんから声がかかる。

昼には、つきたての餅と、お寺で炊かれたおでんで、皆で食卓を囲む

下は六歳から、上は九十一歳まで。老若男女が自然に役割を分け合い、助け合いながら過ごすひとときに、一年分の疲れがゆるんでいくのを感じた。

笑い声のたえない、年の瀬の昼下がりであった。

餅つきのあとは、しめ縄づくり。

高知に移住してからというもの、正月のしめ縄は、ほとんど手作りしている。

夫婦で、藁をぎゅっぎゅとねじりあげ、ウラジロやユズリハを差し込む。あとは橙をつけるだけだ。

娘は輪飾りのしめ縄を綯(な)い、南天の葉と実をあしらって、ひときわ華やかに仕上げた。

いろいろなことがあった二〇二五年。

こうして無事に新年の支度ができることを、心からありがたく思う。

夕方、帰宅すると、吉田仏師はふたたび作業場へ向かった。

仕事と年始の支度を並行する姿は、例年通りである。

今年も、あと少し。

どうぞ皆さまも、お健やかに年を越されますように。