年末の準備はいかがだろうか。 我が家では、無理のない範囲で、少しずつ掃除を進めている。
居間には、木地の仏像や神像が五軀おわす。年の瀬を前に、今日はそのお像たちの埃を払った。
埃を払う、というとあっさりしているが、筆を持ち、お像の前に立つと、掃除中にもふと温かな静けさが訪れる。埃の粒子でさえ、光に照らされてきれいだなと思う。私はいつも、注意深く、一方では随分ぽやっと見惚れながら、筆先で木肌を軽く払う。
自宅のお仏像は、工房で行うような本格的なクリーニングでなくて大丈夫。ご家庭でできる、ささやかなお手入れで十分だ。けれど、この「ささやか」の中に、実に豊かな時間が潜んでいる。
今回は、年末に向けた簡単なお像のお手入れについて、まとめておきたい。
※ 本稿では、一般家庭の仏壇にお祀りされる程度の寸法の「木地像(無彩色)」を想定している。
【準備】
・できるだけ晴れた日に行う。湿気の影響は最低限に。
・足場が安定し、明るい場所で行う。お像も人も、安全第一。
・手を洗い、できればマスクを着用する。清潔にするためと、ハンドクリームなどを落とすため手洗いは必須。思っている以上に埃が舞うので、アレルギーがある方は目も保護されると安心。
・用意するもの:柔らかい筆(安価なもので構わない)、ハンディクリーナー(ワイヤレス推奨)。
お像をお運びする際は、細く薄い箇所は持たず、胴体など、厚みのある部分を支える。まるで、よその赤ちゃんを抱くような気持ちで(私はそう習った)。
【お手入れの手順】
1)合掌
仏様に、これからお掃除をさせていただく旨をお伝えする。声に出しても、心の中でもどちらでもよい。私は、無意識のうちに口に出ていたりする。
2)お像の移動
安定した作業スペースを十分に確保し、お像を置く。安置環境の中で清掃する場合も、周囲の物品を移動して作業スペースを確保したい。
台座・光背・持物は、無理に外す必要はない。取り外ししやすいものであればご自身で扱っていただいて構わないが、部材を失くさぬよう、トレーやタッパーなどに仮置きする。
3)観察
割れや欠け、表面の汚れの状態、虫穴や虫糞などがないか、全体を観察する。
文化財修理の仕事をしていると、かつて医療従事者であったときのことがよく思い出される。患者様を「人体」として、あくまで科学的な手法を以て対峙することと、その方個人の尊厳を大切にすること。それは全く矛盾しない。
「文化財」として仏像を扱うことに、戸惑いを感じる方もいらっしゃると思う。けれど、私たちは、物質としてのお仏像と、信仰の対象としての仏様、一つのものとして向き合っている。全人的医療ならぬ、全像的修理とでもいうのだろうか。仏像の場合はなんと言えばピタリとくるだろう。
それはさておき、お仏像を観察する時は、科学の目と、信仰の目と、もしかしたら、大切な友人を前にしている目もありそうだ。ともかく、この時間は自然と長くなりがちである。(続く)


