現代造佛所私記 No.292「1年後、5年後、10年後」

工房では、御安置した後、施主様にご連絡を差し上げることがある。

お像をお納めしてから1年後、5年後、そして10年ごとを目安に、「お元気ですか? お像のその後のコンディションはいかがでしょうか」とお伺いする連絡だ。

今日も、何件か連絡を差し上げた。

受話器の向こうから聞こえてくる施主様のお声は、皆さま総じてお元気そうで、それだけで胸があたたかくなる。

お像も、1年後、5年後と時を経てなお、良い状態を保てていることがほとんどだ。

施主様に連絡がつかないことも、もちろんある。けれど、お困りのご連絡がないということは、きっとお像も、問題なく過ごしているのだろうと、そう受け取ることにしている。

工房を立ち上げて、来年で10年になる。これまでお納めしてきたお像たち、そして施主様とも、長いお付き合いになってきた。

久しぶりにお電話やメールをすると、「あぁー! 御仏像の!」と、記憶が一気につながるような明るさが弾ける。

続いて、近況に話が及ぶ。近々法要を控えていらっしゃること、お像が変わらず良い状態であること、日々を元気に過ごしておられること。

きっと、皆が等しく、心塞ぐことや、思うようにいかないことも抱えての毎日のはずだ。それでも、こうして明るい近況を語り合えることは、この仕事をしていて、何よりありがたい瞬間である。

今日、メールを差し上げた個人の方から、ほどなくして返信が届いた。

「お不動様、もうそんなに年月が経つんですね。毎日拝んでいます」

その一文に、胸を打たれた。

仏様がおわすことが特別な出来事としてではなく、毎日の暮らしの中に、当たり前のようにあること。「感謝」だけでは言い尽くせない、ただただ頭を垂れる思いになる。

ご返信の中には、年の瀬のご予定の話も綴られていた。お像は、こうした日常とともに在るのだと改めて思う。

お像は、私たちよりも、はるかに長い時間を生きていく。私たちがこの世を去ったあと、どんな人々と出会い、どんな世界を見るのだろう。

その長い年月を思えば、10年はほんの一瞬だ。

されど、また5年後、10年後。忘れた頃に、ご連絡を差し上げる。

どうか皆さま、健やかに。

そして、お像たちもまた、それぞれの場所で、豊かな時を重ねていきますように。

アイキャッチは、アフターフォローのスケジュール管理画面。2036年年末までの予定が入っている。その時世界はどうなっているだろうか?