現代造佛所私記 No.288「3年手帳(前編)」

毎年買っている手帳のレフィルを求めて、文房具店に足を運んだ。

来年の予定が一気に入ってきたのに、長期出張やインフルエンザですっかり後回しになっていた。うっかり忘れてしまわないよう、使い慣れた手帳レフィルを早く用意しなければ、と真っ直ぐ人混みをゆく。

クリスマス前のショッピングモールは、いつにも増して煌めいている。サンタクロースやトナカイ、スノーマンが、あちこちで微笑みかけてくる。

目当ての文房具店はというと、年賀状やポチ袋、カレンダー。クリスマスよりも、新年の気配が漂っていた。

その一角に設けられた、新年の手帳コーナー。ポップな色味でキャラクターたちが賑やかな一角の向こうに、黒や紺の革装丁に金字の手帳たちが、背筋を伸ばして並んでいた。私は、自然とその前に腰を据えた。

ところが、いつものレフィルが見当たらない。はて困ったと周囲を見回したとき、少し分厚めの手帳が目に入った。

三年手帳。

目があった瞬間、突然、社長室に通されたような緊張が走る。「これは私の手帳ではない」と咄嗟に思ったが、いや、待てよ…?と自然と手が伸びた。「三年」という時間感覚にピタリとするものがあったのを、見逃せなかった。

存在は知っていた。身近な人で使っている人も複数いる。

ただ、私にとっては少し大きすぎる気がしていたのと、毎年、新しい手帳に切り替える楽しみも捨てがたかった。それに、三年先までの自分を、あまりうまくイメージできなかったというのも正直なところである。

ふと、三年手帳の背にそっと触れてみる。なめらかな手触りと厚みと重みが、手のひらにどっしりと主張する。

この重さを、自分は持てるだろうか。

クリスマスのBGMを聴きながら、しばらく逡巡した。(続く)