発表会場「オーテピア高知図書館」には、四国四県から小学校低学年から中学3年生までの子どもたちが集まっていた。それぞれの自由研究を携えて。
緊張はある。けれど空気はどこか温かく、子どもたちの表情には、自分の研究をやり遂げてきたという充実感が見えた。ここに辿り着くまで、どの子もよく練り上げてきたのだろう。一年かけて観察を続けた研究、五年間同じテーマを掘り下げてきた研究。そういう粘り強さに、何度も感心した。
小学三年生の娘は、接着剤の研究を発表した。家にある数種類の接着剤を、木や金属や布に貼りつけて、温度、湿度、力の向きなど条件を変えながら、くっつく力の違いを比べたものだ。
この日を迎えるまで、娘は何度も揺れた。
もともとは夏休みの宿題で、クラスの展示スペースに貼り出されるだけのつもりだった。それが市で表彰され、県の発表会でプレゼンをすることになり、気づけば四国大会まで進んでいた。全容をつかめぬまま、娘も私たちもここまで来てしまった。
受賞は嬉しい。けれど、どの研究が優れているかという視点で見られることに、娘は戸惑っていた。先生から心配の連絡をいただいたこともある。娘と辞退を相談したのは一度ではない。
「比べられること、これまであまりなかったかもね」
娘にそう言ってから、少し考えた。でも社会に出れば、否応なく晒される場面もあるだろう。今のうちに経験しておくのも悪くないかもしれない、と。
娘は「やる」と答えた。時にはすっかりやる気を無くし、時には涙ぐみながらも、何度も選び直すように「やる」と言って、練習を重ねた。
受付を済ませ、一番最後にパソコンの接続テストをしていると、「発表は何番目ですか?」と係の方に訊かれ、「あっ、えっと、まだ知らないです!」と慌てると、もう一人の係の方が「吉田さんは一番です」と教えてくださった。トップバッターであることを直前に知ることとなり、心の準備する間も無く舞台に立った。それはかえって良かったのかもしれない。
本人があとで「カチコチだったよ」と言った通り、朝から固かった。表情も、体も。
けれど、余計な心配をする時間もなくマイクの前に立つことになり、比較的なめらかに進んでいった。
あるポイントから、流れが変わった。途中に用意していたクイズの場面で、会場が動いた。児童・生徒だけでなく、役員の先生方、引率の先生、保護者の方々まで参加してくださって、和やかな笑いが起きた。
その瞬間、娘の声もゆるんだ。
張りつめていた空気がほどけて、声に楽しさが混じり始めた。人前で話すことの喜びを今、感じているのだな、と私もほっとした。
発表を終えて席へ戻る廊下の先に、ケーブルテレビのディレクターさんが待っていた。マイクを向けられて、娘は少し頬を赤らめながら言った。
「楽しかったです」
素直な言葉だった。その横顔が、頼もしかった。
帰り道、娘はぽつりぽつりと感想を口にした。
「動画を入れてる研究もあったね。分かりやすかった」
「模型で説明するの、よかった」
「中学生のは難しかった……石とよもぎの研究、すごかった」
自分以外の研究に正直に驚き、取り入れたいものを見つけ、理解の届かない領域には素直に「難しかった」と言える。そんな娘の言葉に、小さな成長の芽を見つけた気がした。
この日の様子は、香南ケーブルテレビでも放送されるという。香南市内の皆さまに、見届けていただけたら嬉しい。
他の子どもたちの研究も、本当に素晴らしかった。ひとりひとりが自分の問いを追いかけている姿に、胸が熱くなった。
娘の心のどこかに、この日の刺激が残っているといい。いつか、大切な指針になってくれるだろう。


