ウニちゃん、あなたが我が家にやって来たのは、三年前の二月七日の明け方だったね。
母猫が臨月だとわかり、ケージを工夫して作った急ごしらえの分娩室を用意した、その二日後のことだった。
外はまだ真っ暗で、ミーミーという小さな声が、眠っていた私たちを呼び起こした。夫と灯りをつけてケージをのぞくと、手のひらに乗るほどの黒い子猫たちが寄り添っていた。
おはぎのように黒く丸いあなたは、百グラムの体で精一杯に鳴いていて、末っ子としてすくすく育っていった。
当初は里親を探していて、名前もつけずに「黒二ちゃん」と呼んでいた。けれど、日に日に我が家の一員としての存在感を増し、自然な流れで一緒に暮らすことになった。
丸い体とツンツンとツヤと張りのある黒い毛並みを見て、「まるで海栗(ウニ)だね。ウニにしよう」と名付けたあの日のことを、今でも昨日のことのように覚えている。
少し大きくなると、呼ぶたびに「うにゃあ!」と返事をしてくれた。 まるで自分の名前を呼んでいるみたいだね、と家族でよく笑った。
兄弟の中ではいちばん小柄だったけれど、いちばん自立心のある子だった。先住猫の皓月ともすぐに仲良くなり、朝から追いかけっこやレスリングをしては、こちらを和ませてくれた。
高いところや隅っこの奥の方が好きで、天井近くの棚でよく昼寝をしていたし、押し入れの奥深くへ冒険に出かけては、そのまま眠りこけたりしていた。
昨夜は皓月と遊んだり、毛づくろいをしあったりしていたね。 そんなこれからも変わらぬ毎日が続いていくと思っていたのに、突然お別れになるなんて。思ってもみなかった。
今朝、近所のおじさんが神妙な顔で家にやって来て、静かに告げてくれた。 「おたくの猫ちゃんが、あそこで亡くなっちゅう」 痛ましさのにじむ声だった。
乾いた用水路の底で、あなたは、いつものようにストーブの前で寝ているような姿で冷たくなっていた。おじさんは「今の時期はもう無いはずやけんど……」と言葉を濁した。 運悪く、獣よけのものを口にしてしまったのかもしれない、ということだった。
あなたを抱き上げて家に連れ帰り、庭の花を添えて線香を焚いた。信じられない気持ちのまま、夫と二人、その場に座り込むようにして、言葉もなくただただあなたのそばにいた。 出張から帰ったばかりで、やっと家族がそろったばかりだったのに。
静かな部屋にいると、お昼寝から目覚めたあなたが、押入れの奥から「にゃごわ〜ん」と出てくるんじゃないかと思ってしまう。
動かなくなった体を前にしても、あなたがふいに伸びをして起き上がりそうで、現実の輪郭がまだつかめないでいた。
ウニちゃん。 あなたが我が家に来てくれた三年は、かけがえのない時間だった。 楽しい毎日を、本当にありがとう。きっとこれからも、何度も何度も、あなたのことを思い出すよ。
小さな体との最後の瞬間まで、何度も何度もなでてその体の感触を手に焼き付けた。
また、どこかで会えたらいいね。
アイキャッチは生後1ヶ月くらいのころ。子猫のような小柄な体に、ピンピンと尻尾をダイナミックに振り回す癖がおかしくて、私たち夫婦はよく手でその真似をした。


