現代造佛所私記 No.199「楽友と彼岸花」

高知市内でカフェを営むYさんが、山上の工房まで龍笛のお稽古に訪れてくださった。

ミュージシャンとして幅広く活動されていた方で、囚われのない自由さで音を紡がれる。ご縁あって一緒に笛を稽古するようになって、気づけば一年が経っていた。今日は休日だった娘も連れ立って、山道をてくてく歩きながら「もう秋だねぇ」と笑みを交わし、集合場所へ向かう。

夏の名残を抱いた風の中、赤々とした彼岸花が咲きはじめている。萩の小さな花も旬を迎えていた。

「久しぶりだから基礎を復習したい」。Yさんは秋にぴったりなベレー帽を脱ぎながら静かに微笑み、笛の用意をされる。いつも謙遜されるが、すぐにコツをつかんでしまう。唱歌も運指も、前から知っていらしたかのよう。やはり音楽家でいらっしゃるのだ。感性が違うなと、感心してばかりいる。

私は師から授かったことをお伝えしているにすぎない。指導というより、共に歩む時間という感覚だ。

横では娘が粘土に夢中になっている。小さな手が形をこねると、小さな小さな世界が現れてくる。音と形、集中の気配が重なって、創造的な力が溢れはじめる。

お稽古を終えて、山の幸と薄味の出汁がおいしいおうどんをいただく。「また次もご一緒に」。そんな柔らかな約束を交わした。

帰路、山を吹き抜けるそよ風に彼岸花がかすかに揺れている。萩がこぼれ咲いて、ほんのりふちどる空気を桃色に染めている。

「あ!あそこにも彼岸花の蕾だよ!」

小さい秋見つけた。まるで夏のような日差しの中、楽友とのささやかで楽しいひとときと共に、秋は始まっていた。