数日前の夕方、9歳の娘が突然、THE BLUE HEARTSの名曲「リンダリンダ」の替え歌を歌いだした。
平安時代の主要な二大流派仏師集団「院派」と「円派」をもじって、「インパエンパ」。あまりに妙で、私も笑ってしまい、その場でスマホを向けて録画した。
ご機嫌に、深い意味なく「院派院派!」「円派円派!」と、あのメロディに乗せて繰り返す様子がシュールで、おかしくて。
娘と二人して遊び心でシンプルなリール動画にまとめ、SNSに載せたのは、戦略でも何でもない、ほんの戯れだった。
けれど今日、その動画が相互フォローの方にリポストされているのを見つけた。そこには「久しぶりに声を出して笑ってしまった」と添えられていた。
その方は、つい先日、最愛の猫を亡くされたばかりだった。
長く寄り添った家族を失う喪失感を思うと、その笑いがどれほど尊いものか、胸がつまった。
私の実家でも、この夏、十九歳と半年の大往生だった「チャトラ」を見送ったばかりだった。月に一度会うくらいのペースだったけれど、声や匂いが今もふと蘇るほど、その存在は大きかった。だから、その方の寂しさはいかばかりかと、ただただ心寄せるばかりだった。
娘にそのことを話すと、眉を寄せて何か言いたげな瞳で口をぎゅっとつぐんだ。それでも「笑ってもらえた」ことを喜んでいた。けれど、喜びと悲しみが同時にあふれて、どう言葉にすればいいのか分からない顔をして、私にぎゅっと抱きついてきた。
「笑ってくれて、よかったね」
そう言って、私たちはしばらく抱き合った。
小さな歌遊びが、誰かの一日に笑顔の一瞬につながったこと、その偶然の巡り合わせは、私たちにとっての途轍もない恵みだった。
忘れずにいたい。
終わらない歌を歌おう 明日には笑えるように
THE BLUE HEARTS 「終わらない歌」


