季節の変わり目に迫り来るのは、台風十五号。
「夕方には大雨になる」というニュースや通知に警戒していたが、不気味なほど静かな宵だった。
停電になったら困ると早めに片付けを済ませたものの、細かな業務連絡をしているうちに、家族は皆就寝してしまった。
二十三時を過ぎると、急に雨脚が強まった。
ときおり吹きつける風とともに、稲光が空を昼のように照らし、雷鳴が足元を低く鈍く轟く。
だけど、窓の向こうでうねる気配とは対照的に、人も猫も眠りについた家の中は、不思議なほど静かである。
今日を振り返れば、横笛の稽古に始まり、PR支援、仏像修理のご相談と、いくつもの案件に向き合った。
もちろん、すべてをこなせたわけではなく、やり残したことは膨大にある。それでも今夜はなぜか、「大切なことをやり切れた」という特別な実感があった。
「さて、今日もコラムを」と思ったときには、言葉がもう湧いてこないほどだった。静まり返った水面のように、ただ清々しい疲労感だけが残っている。台風の迫る激しい夜とは真逆の、澄んだ静けさである。
人生もまた、今日のようでありたい。
願ったすべてを成し遂げることはできなくとも、これだけは、と心に決めたことに命を燃やす。そして、やがてその時が訪れたなら、ただ「ありがたい」とひとこと浮かぶような。凪も嵐もある人生のなかで、そんな境地に至りたいと願う。
心がまた静まり返るなか、今夜は嵐の気配を存分に吸い込み、眠りにつこう。


