山本勉先生(鎌倉国宝館長、半蔵門ミュージアム館長)には、吉田仏師が前職の頃からお世話になってきた。
吉田が独立してからも折にふれて仏像のことを相談させていただき、時にはお互いの猫について言葉を掛け合う、猫友だちのような気さくなお付き合いをいただいている。
我が家の猫が行方不明になった時など、先生は「猫界のネットワークがある」と教えてくださり、愛猫エオンさんに捜索依頼までしてくださった(おかげさまで皓月は無事に帰還した)。
「運慶研究といえば山本先生」、と言われるほど著名な方なのに、どこまでも柔らかく、懐の深い方である。
このたび先生の新著『運慶講義』(新潮社)をご恵送いただいた。
表紙を拝した瞬間、「端厳(きらぎら)し!」と声が漏れた。そのような大日如来のお姿と、研ぎ澄まされたデザインに心を打たれた。思わず龍笛を手に取り、感謝とお祝いの気持ちをこめて演奏をした。
娘にも本を見せると、「仏像さんだ!」と寄ってきて、まず目の色に、そして手の形に注目した。彼女は以前から先生のご著書『仏像のひみつ』を読み、ノートにまとめながら仏像を自分なりに学んでいる。
「この仏像はどこのお寺の?」「なんていう仏像?」とノートを広げ、調べていた。漢字はまだ難しくて読み進めることはできないが、それでも、この一冊が彼女にとって将来大切な道しるべになることを、私は予感している。




お礼の気持ちを写真とともに先生へお伝えすると、すぐにお返事をくださった。
「龍笛を演奏してくださったとのこと、たいへん光栄です。吉田家蔵書として伝えてくださればと思います」
胸が熱くなった。この本が「蔵書」として我が家に根づく。家族の手を経て受け継がれる存在となる。先生の言葉が、その未来を指し示してくださったように思えた。
そして読み進めるほどに感嘆の声がもれる。先生の筆致のなんと端正でいらっしゃることか。誤解のない正確さの中に優美さがあって、一文の味わいが深く、つい「かっこいい!」とミーハーな読み方をしてしまう。一方で、肩肘張らずに語りかけてくださる雰囲気もあり、かつ研究の確かさに裏打ちされた重みがある。
私は速読な方だが、この本は、仏像を愛する気のおけない仲間と秋の夜に集まり、一節ずつ声に出して読み合いたくなるような本だと感じている。それぞれが一冊ずつ手にとり、時に立ち止まって「ここはどうだろう」と語り合う。そんな場面が自然に思い浮かぶ。
先生にはどうかいつまでもお元気で、これからも仏像に関わる多くの人を照らし続けていただきたい。このたびのご出版を、心よりお祝い申し上げます。


