現代造佛所私記 No.390「忘れ物回収人—寿司(後編)」
——ガタンゴトン。 列車の走行音で我に返ると、紗枝は、出入り口の隣に立っていた。ぼやけた視界の真ん中で、吊り革の揺れが、ぴたりと止まって見える。バッグを両手で抱えたまま、いつの間にか眠っていたようだ。 周りには、疲れた顔...

——ガタンゴトン。 列車の走行音で我に返ると、紗枝は、出入り口の隣に立っていた。ぼやけた視界の真ん中で、吊り革の揺れが、ぴたりと止まって見える。バッグを両手で抱えたまま、いつの間にか眠っていたようだ。 周りには、疲れた顔...
「お降りの際は、傘などのお忘れ物にご注意ください」 地下に潜った列車の窓に、春の雨が雫になって散る。ガタンゴトンと一様に人を揺らし、最終列車が滑り抜けていく。 慰労のにじむアナウンスが、紗枝の疲れ切った体に沁みた。ふと見...
大樹がその集落跡に着いたのは、朝の八時だった。高知市から車で40分、山道を登ってやってきたのは、父方の祖母の家である——と言ってももう六年ほど空き家になっているが。 日焼けで脱色された縁側に腰かけると、幼少期に遊んだ景色...