現代造佛所私記 No.148「三日月とコントロールZ」
海岸線の国道を、西に向かって車を走らせる。 予定より2時間遅れの出発で、少し心が泡だったままハンドルを握る私の視界を、ふと広げてくれたものがあった。 日の入りと共に、すうっと姿を現した細い月。 「綺麗だねぇ!」娘が後部座...

海岸線の国道を、西に向かって車を走らせる。 予定より2時間遅れの出発で、少し心が泡だったままハンドルを握る私の視界を、ふと広げてくれたものがあった。 日の入りと共に、すうっと姿を現した細い月。 「綺麗だねぇ!」娘が後部座...
夏の夕暮れは、独特の不思議な空気を帯びる。いつもは閉じている過去との境目がポッカリ通じたように、黒く緩い夜風の向こうに手を伸ばせば、子どもの頃の自分に触れられそうな気がする。 今宵の六畳間は、扇風機の微かな音とエアコンの...
我が家の玄関先に並ぶ大小様々なバケツ。それはいつしか私にとって「水中の静かな宇宙」となった。 今回は、現代造佛所私記No.134で登場したメダカたちの後日談だ。 その後、彼らは元気に泳いでいる。ささやかながらも確かな命の...
八年ほど前から、わが家の睡蓮鉢には、世代交代をくり返しながら、メダカたちが棲んでいた。 数が増えすぎて、友人に里親になってもらったこともあったが、やがて寿命が訪れ、次第に数は減り、ついにはメダカ不在のまま、今年の夏を迎え...
今朝、私はだいぶ寝坊をした。「お腹すいたよ」という娘に「冷蔵庫にパンがあるから食べて」と言ったあと、気づけば、また深く眠ってしまっていた。 「ジュージュー」という音で目を覚まし、台所へ行ってみると、娘がパンを焼きながら、...
ときどき、小学生の娘が「大好き!」とだけ言うことがある。 それは、私や夫が彼女に何か好ましいことをしたときだけではなく、なんの脈絡もなく、唐突に発せられることが多い。 「お母さん」と呼びかけるような調子であったり、「わた...
短い梅雨を経て、屋根の上を見上げると、野薔薇の新芽が、空に向かってぐいと手を伸ばしている。その若々しい淡い緑の、なんと屈託のないことか。 この野薔薇は、もともと実家の裏庭に咲いていたものだ。母から20cmほどの小さな一枝...
一日の終わり、寝かしつけのひとときは、子どもにとって、ささやかな旅のようなものかもしれません。そんな夜の「おやすみ」までの流れを、もしも寝台列車に見立てたら。今宵は、わが家の「夏の宵発・ぐっすり行き」寝台列車にご案内いた...
3週間ほど前になろうか。 古いタオルを雑巾に下ろそうと、デスクに持ってきた。いつでも縫えるようにと、裁縫箱も出してきた。 しかし、なかなか手がつけられず、タオルと裁縫箱はだんだんと隅に押しやられていった。 とにかくここ数...
この「理髪店」には、鏡がない。誰も知らない、山奥で時々ひっそりと開く。 梅雨の終わり、雨上がりの午後の光が、静かに玄関先を照らしている。 「今日、お願いできる?」月に一度だけ、常連の男性客から連絡が入る。 午後1時半、コ...