現代造佛所私記 No.276「師走朔日の茶の湯(後編)―空間と律動」
美しい所作を目指し、稽古を重ねる日々。 その傍らには、いつも師匠の静かな眼差しがある。 いつも驚きと尊敬の念をおぼえるのだが、師匠はたとえ別の弟子と話をしていても、点前で起こるほんの少しのずれも見逃されない。そこにいつも...

美しい所作を目指し、稽古を重ねる日々。 その傍らには、いつも師匠の静かな眼差しがある。 いつも驚きと尊敬の念をおぼえるのだが、師匠はたとえ別の弟子と話をしていても、点前で起こるほんの少しのずれも見逃されない。そこにいつも...
とうとう今年も師走となった。朔日に稽古ができるのはちょっと珍しい。 兄弟子が新年の重ね茶碗の点前を稽古するのを見ながら、流れ星のように去っていく一年の手触りを確かめていた。 私は昨年一年、稽古を仕事で休んだ上に、今年は特...
「わぁ、いい匂い!」堂内を満たす香に、娘が胸を大袈裟にそらせ息を呑んだ。衣擦れの音や荷物を運ぶ音が、お堂の静寂に響いては溶けてゆく。 「本当に、良い香り」私も深呼吸しながら、静かに足を踏み入れた。 広々とした香積寺(愛媛...
発表会場「オーテピア高知図書館」には、四国四県から小学校低学年から中学3年生までの子どもたちが集まっていた。それぞれの自由研究を携えて。 緊張はある。けれど空気はどこか温かく、子どもたちの表情には、自分の研究をやり遂げて...
ウニちゃん、あなたが我が家にやって来たのは、三年前の二月七日の明け方だったね。 母猫が臨月だとわかり、ケージを工夫して作った急ごしらえの分娩室を用意した、その二日後のことだった。 外はまだ真っ暗で、ミーミーという小さな声...
五日間にわたる仏像の応急処置を終えた。今回の拠点は輪島市である。 出発の朝、宿の女将さんとしばらく言葉を交わした。ご自宅は半壊し、元のように建て直す資金はないという。補助の範囲で、どうにか住めるよう整えるしかない。宿その...
能登の仏像応急処置から戻り、知人宅で預かってもらっていた我が家の猫たちを迎えに行った。 九日ぶりである。知人家族には手間をかけさせてしまったが、送ってもらった写真の様子から、ずいぶん可愛がってくださっていたようだった。本...
「まもなく着陸態勢にはいります」 機内アナウンスに、はっと意識が浮上した。気流の影響で揺れが続いたフライトだったようで、機内サービスも省略されたという謝罪の声が流れている。 「もう着いたのか」 ゆっくり高度を下げる機体に...
ガタン、ガタン。ブーン。ドーン。 小高い丘の上の境内で、重機が絶えず首を振っている。 背後で「コン」と小さな音がして振り返ると、一尺ほどの板材が車のボディに泥をつけ、ぽとりと落ちた。足元のぬかるんだ地面には、似たような端...