如三和尚の志

室町時代からまきでら長谷寺(高知県香南市)の山門を守ってきた仁王像。檀信徒の長年の悲願でいらした修理が2020年から始まり、2年が経ちました。

コロナによる様々な制限や他の案件の急な予定変更により、予定していたスケジュールより遅れておりますが、現在コツコツと毎日仁王様と向き合っております。

解体後の調査で、造像当初の顔面部が残されたと思われること、この面部に合わせて他のほとんどの部分が江戸時代に作られていることが分かってきました。ここから大修理が行われた江戸時代当時の住職・如三和尚の「古い仁王像の痕跡を残したい」という強い意志が感じられます。

6月中旬、ご住職の竹井玄要師、御寺族様が現場にお見えになり、抜去した釘やカスガイやまだご覧いただいていない解体箇所などを前にお話ししました。

この釘やカスガイは再利用が難しい状態だったため、併せて250本の発注を和釘専門の鍛冶屋さんにお願いしました。しっかり加熱・鍛錬をしてくださいましたので、永く仁王様を支えてくれると期待しています。

今後の作業は、これ以上の傷みを止めるため樹脂を含浸した上で、仁王像の構造を記録するための写真撮影を予定しております。これは、お像全体がどのように構成されているか、パーツひとつ一つを立体的に図にしていくためのものです。あわせて、面部とそれ以外の樹種同定及び、年代測定といった科学的調査を視野に入れて作業を進めています。

時間はかかりますが、単なる修理作業だけではなく、このような詳細な記録をとることや調査がとても大切です。記録に関連して、檀信徒様に仁王像にまつわるエピソードや思い出をお聞きしたいと御住職にご相談しました。

専門的な修理と調査で、まきでら長谷寺とその周辺の歴史がより豊かに見えてくるだけでなく、檀信徒様のお言葉を残すことで、このお像がどれほどの願いや祈り、志によって調査・修理されたかを伝えることになるのではと思います。

令和の大修理およびその記録は、江戸時代の修理が私たちに伝えてくれたようにこれから先300年にわたり人々を支え、またさらにその未来へ伝えてくれることでしょう。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。