正面修理図解(修理報告書より)
前回の続きです。
修理方針・計画がまとまり、いよいよ着手です。
この度の毘沙門天立像(竹林寺蔵)は、次の5つの工程で修理しました。
(1) クリーニング・解体 (2) 含浸強化 (3) 虫穴部充填、穴埋め (4) 補作(新補)、組み上げ (5) 補彩・古色 |
まず、乾式・湿式クリーニングを施した後、解体。
邪鬼を傾けると、中から大量の虫糞がザーッと流れ落ちてきました。
(糞といっても、顕微鏡で見るとキラキラしてすごく綺麗なんですよ。)
次に腐食した部分に樹脂を含ませ、木質を強化しています。昔は手の施し用なく切り落としていた箇所も、新しい修復材料の登場で修理できるようになりました。
虫穴や腐朽した部分、大きい穴を埋め、表面を滑らかにしていきます。
下の写真(左)の白いところは、彫刻部との段差をうめるための胡粉。
写真(右)は、大きい虫穴や釘を除去した後の穴、欠損した彫刻部などに埋め木(土佐ヒノキ)を施した様子です。
新造箇所(両腕、天衣、光背、框、戟)の形状は、室町時代〜近世の作例を参考に発泡スチロールで試作。
ご住職様に確認していただいた上で、土佐ヒノキを用いて制作しました。
最後は、本体に残る色味に合わせて補彩を施し、古い風合いを出していきます。
ビフォー・アフター
完成写真
お寺に納めに伺ったところ、ご住職より「お像がなんだか嬉しそうじゃないですか。修理箇所が分からないほど自然ですね」とのお言葉を頂戴しました。
ご満足いただけたようで一安心です。
この度はご用命いただき誠にありがとうございました。
よしだ造佛所一同
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参考文献
「持国天(愛知 浄蓮寺)」日本の美術7,No.98,至文堂,昭和49年
「毘沙門天」重要文化財4,毎日新聞社,昭和49年
前田和男「竹林寺の仏像」,五台山竹林寺刊行,平成15年
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※彫刻部の接着や補彩の固着材には、化学物質無添加の古典的膠を使用(ただし、両肩矧ぎ目にはエポキシ樹脂を併用、天衣は竹釘で接合)。