修理レポート:毘沙門天立像 Part 1

毘沙門天立像(修理前)

今回は竹林寺様(高知市)からのご依頼です。
ご住職より掲載許可をいただきましたので、ブログで修理の様子をご紹介します。

竹林寺様は、神亀元年(724年)に開創された土佐屈指の古刹。

弘法大師が修行されたという由縁で四国霊場31番札所に定められ、いつ訪ねてもお遍路さんはじめとする参拝者で賑わっています。

♫土佐の高知の はりまや橋で 坊さんかんざし 買うを見た♫

土佐の民謡「よさこい節」で歌われている純信・お馬の恋物語。
この歌に登場する「坊さん(=純信)」が修行していたお寺が、まさにこの五台山竹林寺様です。

お預かりしたのは境内の紅葉が大変美しい時期でした。

さて、お像について見ていきましょう。

本体は、高さ40.8cm(髪際高36.0cm)で、針葉樹(ヒノキか)の一木造り。
彫眼。内刳りはなく、頭体幹部〜足ホゾまで縦一材から彫出されていました。

素地像で、制作当初に面部(眼球、口唇)のみ彩色が施されていたようです(制作年代は不明)。

本体・邪鬼ともに、全体的に細かな欠損、割れ、虫穴がたくさんあり、虫食でまるでスポンジのようになってしまっていました。

目を引くのは後補(制作当初のものではなく、後の時代に補われた部分)と思われる両腕。

よさこいの本場・高知のお像としてはアリかもしれない…と思いつつ、体勢や視線からすると不自然な形といえました。

踊っていらっしゃるようにも見えるお背中

右天衣、かまち、戟(もしくは宝棒)は亡失し、光背は他像からの転用もしくは後補に置き換わっています。

修理方針としては、ご住職様と協議の上、現状維持修復および適切な形での新補中心に、劣化した彫刻部を強化することとなりました。

次回、どのように修理されていったかをお伝えします。
お楽しみに!

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