彩色截金・並木秀俊

日本画家・日本美術院 院友・東京藝術大学 非常勤講師・博士(文化財)

 

形を引き立てる彩色を

「後世に残したいと心動かされる仏像には、お像そのものの品質はもちろんのこと、必ずと言ってよいほど、彩色・截金が施されている」 吉田仏師はいいます。
しかし、ただ色をのせればよい、というものでもありません。
「形を引き立てる彩色を施したい」
そう考える吉田が出会ったのが、東京藝術大学・講師の並木秀俊氏でした。

吉田は、東京藝大で古典技法・材料の研究発表を行っていた並木氏の作品と出合い、すぐに電話をかけたといいます。

当時の印象をこう語ります。
「この人なら私の意を組んで彩色してくれそうだと感じた」。
−ただの置物・人形ではない、心と響きあえるような仏像でなければ造る意味がない−
そんな自恃を貫く吉田の彫りを見て、並木氏は言いました。

「吉田さんの(彫る仏像)は本当にかっこいい。こちらまでやる気にさせてくれるんです。私もやはり永く残る物を作りたいですから。」

 


遠い未来を描く匠であればこそ、通じ合う何か

現在、よしだ造佛所の彩色・截金は、並木氏に一任されています。

二人の打合せに同席した担当は、奇妙さを覚えました。
「打合せ」というにはあまりに言葉少なく、互いにお像から目をそらさず話すのです。
どのような色合いにするかポツポツと語ったあと、最後に一言「後は任せます」とのみ。

「その色でよいか」と問いかけられるのは、仏師でも、彩色師でもない、施主様でさえない、
他でもない、まさに「その仏像が同意しているか」を確認するかのような光景でした。

技術では「整った“型”」まで。
そこに「血(智)」が流れて初めて「かたち」となります。

手作業でしか表現できない「血と智」にこだわる匠たちとお像との静かなやり取りが、
観る人に語りかけてくるような生き生きとしたお像を生み出していくのです。