現代造佛所私記 No.55「けずる」

梅の香りが時折かすめる山あいの小さな町。麓から見る山は、いただきに白い帽子をかぶりつつも、春を待ち侘びた生き物を解き放とうとしていた。 確かな春の兆しがあるというのに、この六畳の和室では、季節の気配も、時の流れも止まって...